アビクラリンはアルツハイマー病になったラットの記憶障害を改善する
出典: Neurotoxicity Research 2022, 40, 140–153
https://link.springer.com/article/10.1007/s12640-021-00467-2
著者: Nikita Patil Samant, Girdhari Lal Gupta
概要: ケルセチンの類似物質の一つに、アビクラリンがあります。ケルセチンに糖が1個結合した形で、ミチヤナギというタデ科の植物に存在することが知られています。このアビクラリンには、アルツハイマー病になったラットの記憶障害を元に戻す働きがあることが発表されました。
アミロイドβという蛋白質はアルツハイマー病の原因物質で、脳に蓄積すると脳神経を破壊して、記憶障害を始めとする諸症状が現れます。ラットの脳にこのアミロイドβを注射して、アルツハイマー病の状態にして実験しました。
明るい箱と暗い箱を用意し、扉で仕切って、2つの箱をつなぎます。暗い箱の床には電線が張り巡らしてあり、ここに電気を流すとラットの足に電気ショックが与えられます。まずラットが箱に慣れるため、5分間、両方の箱を自由に行き来させます。この時は、暗い箱に電気を流しません。次の1分間は、明るい箱にラットを留めます。続いて、暗い箱に入った時には、扉が閉まり、床に電流が流れて2秒間の電気ショックを与えます。24時間後、ラットを明るい箱に入れ、留まっている時間を測定します。暗い箱に電気は流しませんが、痛い思いをした記憶が鮮明なら、明るい箱に留まる時間が長くなります。100秒間の試験中、正常なラットは明るい箱に90秒間いましたが、アルツハイマー病のラットは55秒と極端に減少しました。この違いこそが24時間前の記憶を反映しています。
アルツハイマー病にしたラットに、21日間継続してアビクラリンを与え、同様の実験をしました。体重1 kgあたり25, 50, 100 mgとなるようにアビクラリンを飲ませました。25 mgでは明るい箱にいた時間が60秒、50 mgでは70秒、100 mgでは75秒と、投与量が増えるに従って記憶障害が回復しました。特筆すべきは、100 mgの時の75秒は、アルツハイマー治療薬として汎用されているドネペジルと同等の値でした。
キーワード: アルツハイマー病、記憶障害、アミロイドβ、アビクラリン