ルチンの葉面散布は、トマトの発育・実り・栄養価を向上させる
出典: Scientia Horticulturae 2022, 294, 110755
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0304423821008621?via%3Dihub
著者: Pedro Henrique Gorni, Gustavo Rios de Lima, Lucia Maria de Oliveira Pereira, Kamille Daleck Spera, Allan de Marcos Lapaz, Ana Cláudia Pacheco
概要: ケルセチンの類似物質の一つに、ルチンがあります。ケルセチンに2個の糖が結合した形です。このルチンがトマトの発育に有益であると、最近発表されました。
ルチンをアルコール水に溶かして、試料溶液を調製しました。温室でトマトを栽培する際、葉の表面に20日間続けて、ルチン溶液を吹き付けます。同じ場所で、ルチン処理をしないトマトも並行して栽培して、両者の育ち具合を比較しました。
ルチン散布したトマトの地上部分の重さは、ルチン非処理の時と比べて、54~66%向上しました。トマトの実りは、2通りの指標で評価しました。一つは、1本の木に生った全部の実の重さです。ルチン処理の有無で、140 gと310 gと2倍以上の開きがありました。もう一つは単純に1個当たりの実の重さの平均です。こちらも22 g vs. 45 gで同様に2倍以上の差を示しました。
さらに、トマトの実の中身を調べる実験もしました。トマトの栄養素の代表として、リコピンとβカロテンがあります。実1 g中のリコピンは、ルチン非処理で12 μg、ルチン処理で22 μgでした。一方、実1 g中のβカロテンは、ルチン非処理で19 mg、ルチン処理で30 mgでした。この実験事実は、抗酸化物質のルチンで育てたトマトは、同じく抗酸化物質であるリコピンとβカロテンを豊富に産出して、抗酸化物質が連鎖することを意味します。酸化とは体が錆つくようなもので、抗酸化物質は錆を落としていつまでも若々しさを保つ働きがあります。故に、トマトもルチンもケルセチンも健康に役に立ちます。
結論として、ルチンはトマトの発育・実り・栄養価の全てに好影響をもたらす、有用な農薬として使える可能性を秘めています。
キーワード: ルチン、トマト、発育、抗酸化物質、リコピン、βカロテン