ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体は、有望な化粧品成分として期待される

出典: International Journal of Molecular Sciences 2022, 23, 433

https://www.mdpi.com/1422-0067/23/1/433/htm

著者: Anh Thu Ha, Laily Rahmawati, Long You, Mohammad Amjad Hossain, Jong-Hoon Kim, Jae Youl Cho

 

概要: ケルセチンの類似物質の一つに、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体があります。ケルセチンに1個の糖が結合した形です。今回の研究では、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体のスキンケアに関する基礎データを取得しました。

皮膚は角化細胞という細胞で構成されていますが、この細胞を紫外線で刺激すると、炎症を誘導する物質が増えます。皮膚(肌)が紫外線で損傷する現象の細胞レベルでの再現ですが、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体を添加した角化細胞では、紫外線による炎症誘導物質の生成が抑制されました。

ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体にはまた、角化細胞の水分を調節する遺伝子の発現を活性化する働きも発見されました。紫外線で角化細胞を刺激する実験を行った際、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体による処置の有無で、3種類の遺伝子の違いが確認されました。詳しく調べた結果、3つとも細胞内に水分を保つ、すなわち保湿効果を発揮する遺伝子でした。

皮膚組織には角化細胞だけでなく、メラノーマ細胞という細胞も存在します。メラニンという色素を作り、皮膚に色調を与える働きがあります。このメラニンが必要以上に作られ、組織に沈着すると、肌の大敵であるしみが見られます。メラノーマ細胞を特定のホルモンで刺激すると、メラニン形成が開始します。しかし、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体が存在すると、ホルモンで刺激した際のメラニン形成が阻害されました。すなわち、しみが作られる根本的な要因を、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体で取り除くことができました。

以上の結果は、ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体は、紫外線から肌を守り、肌の潤いを保ち、しみの形成を防ぐことが期待されます。化粧品の素材として、非常に魅力的です。

キーワード: ケルセチン-3-O-グルクロン酸抱合体、抗炎症作用、メラニン、保湿効果、化粧品