ケンフェロールとケルセチンは、横紋筋肉腫の治療薬候補として有望である
出典: Journal of Experimental & Clinical Cancer Research 2021, 40, 392
https://jeccr.biomedcentral.com/articles/10.1186/s13046-021-02199-9
著者: Rupesh Shrestha, Kumaravel Mohankumar, Greg Martin, Amanuel Hailemariam, Syng-ook Lee, Un-ho Jin, Robert Burghardt, Stephen Safe
概要: 横紋筋肉腫は5歳以下と15歳前後で見られる小児癌で、全身の横紋筋(骨格筋)から発生する腫瘍です。治療には手術・化学療法・放射線療法を組合せますが、療法5年後の生存率は40~72%と決して高くなく、更なる改善が望まれます。今回の研究では、ケルセチンとその仲間であるケンフェロールに、治療薬候補として期待できるデータが見出されました。
横紋筋肉腫細胞にはNR4A1という蛋白質が存在しますが、最近になってようやくその働きが解明されつつあります。横紋筋肉腫の増殖や生存にはNR4A1が深く関与していることが、分かって来ました。また、G9aという癌遺伝子の活性化にも、NR4A1が寄与します。これも最近になって報告された研究ですが、ケンフェロールを胃癌細胞に作用させると、その細胞中でG9aの発現が縮小しました。
G9aという共通項に着目して、今回の研究が開始されました。ケンフェロールと、構造がよく似たケルセチンをNR4A1に作用させたところ、両方とも高い親和性を示しました。「親和性が高い」とは、NR4A1に結合しやすく、結合したら引き離すのが困難であることを意味します。その結果、ケルセチンないしケンフェロールがNR4A1に結合すれば、その働きを阻害することが期待できます。
実際、ケルセチンもケンフェロールも、横紋筋肉腫細胞に作用させると、その増殖を抑えることができました。また、マウスの脇腹に横紋筋肉腫細胞を含む生理食塩水を注射して、強制的に発癌した実験も行いました。発癌後、何も処置しないと、腫瘍組織は増殖を続けます。3週間後には、発癌時の約4倍の体積にまで拡張しました。しかし、ケルセチンやケンフェロールを飲ませたマウスでは、反対に腫瘍組織の縮小傾向が見られました。
以上の結果は、ケルセチンとケンフェロールが横紋筋肉腫の次期治療薬候補として、非常に有望であることを示唆しています。
キーワード: 横紋筋肉腫、治療薬、ケルセチン、ケンフェロール、NR4A1、G9a