ケルセチンの摂取は、激しい運動に伴う筋損傷を予防する
出典: Frontiers in Endocrinology 2021, 12, 745959
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fendo.2021.745959/full
著者: Paolo Sgrò, Roberta Ceci, Marco Lista, Federica Patrizio, Stefania Sabatini, Francesco Felici, Massimo Sacchetti, Ilenia Bazzucchi, Guglielmo Duranti, Luigi Di Luigi
概要: 激しい運動を行うと、筋肉が損傷を受けます。同時に、損傷した筋組織を再生する、自助的な反応も起こります。その再生の担い手は、インスリン様成長因子(IGF)と呼ばれる蛋白質で、骨格筋の前駆細胞を増殖させて、骨格筋細胞に分化させる働きが知られています。逆に言うと、IGFの発現度合が大きい組織ほど、筋損傷が進んでいる指標にもなります。ちなみに、IGFには2種類あり、IGF-1は蛋白質合成を活性化します。もう一つのIGF-2は筋肉を再生しますが、詳細な仕組みは不明です。
今回の研究は、18~30歳の健常者12名を対象に行われました。前もってケルセチンを摂取すると、その後の激しい運動に伴う筋損傷が予防できることが検証されました。
12名を半分ずつ2群に分けました。6名はケルセチンが500 mg入ったカプセルを朝食時に飲み、その12時間後にもう1錠飲んで、1日に1 gのケルセチンを摂取しました。残りの6名はケルセチンが入っていないカプセルを同様に飲んで、比較対照としました。2週間の摂取期間を設け、筋損傷を誘発する程の激しい運動を行います。その後の1週間は定期的に血液検査を行って、IGFの挙動をモニタしました。
運動してから48時間は、ケルセチン群・対照群ともに、IGF-1は殆ど血中に見つかりません。それが78時間後には両群ともに急上昇してピークとなります。ケルセチン群の場合、96時間後には78時間後の約半分のIGF-1となり、7日後には更に半分となりました。一方、対照群のIGF-1は78時間後~7日後で若干の減少はあるものの、いつまでも残っています。IGF-2は、挙動の違いがより鮮明でした。ケルセチン群の場合、IGF-2はIGF-1と同様に、78時間後をピークにその後は順調に減少しました。反対に、対照群では78時間後からIGF-2が増えて行きました。
以上の結果は、ケルセチンによる筋損傷の予防効果を、端的に物語っていると言えましょう。
キーワード: ケルセチン、筋損傷、予防、IGF