ケルセチンとダサチニブで老化細胞を除去して、フレイルを軽減する
出典: Scientific Reports 2022, 12, 2425
https://www.nature.com/articles/s41598-022-06448-5
著者: Hidetaka Ota, Ayuto Kodama
概要: フレイルとは、高齢者が健康な状態と要介護状態の中間あることを意味します。身体機能や認知機能が低下しますが、適切な処置を行うことで介護を要しない状態を維持する可能性があります。フレイル対策は、高齢者時代を迎えるにあたり、社会全体で向かい合うべき重要な課題です。
老化促進モデルとしてSAMP10マウスがあり、加齢と伴に脳委縮を自然発症することが知られています。今回の研究では、SAMP10マウスをフレイルのモデルと見なして、ケルセチンとダサチニブによる軽減効果が検証されました。
まず、18~38週齢における、SAMP10マウスと正常なマウスとの行動を観察して、フレイル指数を比較しました。フレイル指数とは、体重の減少・活動量の減少・歩行速度の減弱・筋力の低下といったフレイルに関係する項目を総合的に評価した数値です。18週齢の時点では、SAMP10マウスと正常マウスとの間にフレイル指数の差はありませんでした。しかし、26週齢以降は顕著な差を認め、SAMP10マウスにフレイルが進行しました。そして、30週齢における総歩行距離は、SAMP10マウスの1920 cmに対して正常マウスが2792 cmであり、一見、取り返しがつかない程フレイルが進行しました。
しかし、老化細胞を除去すると、取り返しが十分可能であることが分かりました。老化細胞とは、増殖が不可能な状態でありながら、死には至らない細胞を言います。ケルセチンと白血病薬ダサチニブを組合せると、老化細胞が体内から除去されることが知られています。
30週齢にて、SAMP10マウスを、老化細胞を除去する処置と処置なしの2群に分けました。前者はケルセチンとダサチニブの組合せを飲ませ、後者には飲ませずに、効果を比較しました。8週間後、すなわち38週齢における総歩行距離を比較しました。非処置群は1408 cmでさらにフレイルが進行しましたが、老化細胞除去群は2694 cmに改善されました。
すなわち老化細胞を除去すると、フレイルが進行したSAMP10マウスを、正常マウスと同等レベルにまで改善できたことを意味します。
キーワード: フレイル、SAMP10マウス、ケルセチン、ダサチニブ、老化細胞除去