ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ルチンとmiR-124でアルツハイマー病を相乗的に治療する

出典: Small 2022, 18, 2107534

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/smll.202107534

著者: Qin Ouyang, Kai Liu, Qubo Zhu, Huiyin Deng, Yuan Le, Wen Ouyang, Xiaoxin Yan, Wenhu Zhou, Jianbin Tong

 

概要: ケルセチンの類似物質の一つに、ルチンがあります。ケルセチンに2個の糖が結合した形です。このルチンとmiR-124とを脳に同時に送り届ける技術を開発して、アルツハイマー病の治療に役立つ可能性が示されました。

核酸と呼ばれる遺伝を担う物質の中に、マイクロRNAという比較的短い種類があり、miR-124はその範疇に属します。正常な脳にはmiR-124が多く存在しますが、アルツハイマー病を発症すると減少してしまいます。アルツハイマー病の治療に、不足したmiR-124を補う意義は容易に想像できますが、ルチンと組合せると、さらに効果が増強されました。

しかし、ルチンやmiR-124に限らず、脳に薬物を届けることは容易ではありません。栄養分は血液の循環で全身に届くので、薬物も同じように必要とする臓器に届けることができます。脳は特別に重要な場所ですから、本当に必要な物質だけを選別する血液脳関門という機能が存在し、薬物ははじかれてしまいます。そこで、ルチンとmiR-124が同時に血液脳関門を通過できるように、DNAナノフラワーという技術が応用されました。DNAとは遺伝子そのものですが、百万分の一mmの厚さにまで小さくして電子顕微鏡で観察すると、花びらような形をしており、ナノフラワーと呼ばれます。DNAナノフラワーにルチンとmiR-124を載せ、特定の蛋白質で処理をして血液脳関門の通過性を比較しました。種々の蛋白質を検討した結果、RVG29なるものがベストの結果を与えました。

このようにして新規に設計したルチンとmiR-124を含むDNAナノフラワーを、家族性アルツハイマー病のマウスに与えると、脳に不足したmiR-124が補われました。また、BACE1とAPPと呼ばれる2種類のアルツハイマー病の原因物質が、脳から除去されました。注目すべきことに、ルチンだけを含むDNAナノフラワーやmiR-124だけを含む場合よりも、両方による処置の方がはるかに多くの原因物質を除去したのです。

キーワード: ルチン、miR-124、DNAナノフラワー、血液脳関門、アルツハイマー病