ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ラットの関節リウマチは、ケルセチンとメトトレキサートとの組合せが軽減する

出典: Molecular Medicine 2022, 28, 24

https://molmed.biomedcentral.com/articles/10.1186/s10020-022-00432-5

著者: Karim Samy El-Said, Amira Atta, Maysa A. Mobasher, Mousa O. Germoush, Tarek M. Mohamed, Maha M. Salem

 

概要: アデノシンデアミナーゼという蛋白質は、関節リウマチの鍵であり、関節に硬直と痛みをもたらすことが知られています。コンピュータによるシミュレーションにて、ケルセチンがアデノシンデアミナーゼの働きを阻害することが予測されました。それならば、ケルセチンが関節リウマチに効くかどうか、ラットを用いる実験で確かめたのが本研究です。

フロイント完全アジュバントと呼ばれる牛酪菌の死菌体をラットの後脚の足底に注射すると、直後に炎症が誘発され、ヒトの関節リウマチと類似した状態になります。すなわち、関節腔(骨と骨の隙間)が狭くなり、滑膜(関節の内側を覆う膜)が異常に増殖し、組織が腫れ、骨が浸食されました。その後、ケルセチン、関節リウマチの標準治療薬であるメトトレキサート、あるいは両者の組合せを注射しました。いずれも関節リウマチの症状を改善しましたが、組合せの注射は、それぞれの単独注射より優れた改善効果を示しました。

当初に予想したアデノシンデアミナーゼの働きですが、ラットの関節と血液を調べました。関節リウマチが誘発されると異常に活性化しましたが、治療されたラットではアデノシンデアミナーゼの働きが抑えられました。面白いことに、この場合も組合せに、ケルセチンやメトトレキサートの単独注射時と比べて優れた阻害効果がありました。また、関節組織に発現する炎症に関連する蛋白質の挙動も、治療の前後で比較しました。ここでも、検査したほとんどの蛋白質で相乗効果が見られました。すなわち、組合せは単独注射に比べて良好に、炎症原因蛋白質を除去しました。

あらかじめケルセチンの効果が予測され、動物実験で確認した研究ですが、さすがに組合せの相乗効果までは、いかに性能が良いコンピュータでも予測できないのが現状です。

キーワード: 関節リウマチ、アデノシンデアミナーゼ、ケルセチン、メトトレキサート、相乗効果