BHTとケルセチンは食品保存剤として相乗効果を発揮する
出典: Biotecnia 2022, 24, 69–78
https://biotecnia.unison.mx/index.php/biotecnia/article/view/1546/634
著者: Flavio Martinez-Morales, Juan Ramon Zapata-Morales, Othoniel Hugo Aragon-Martinez
概要: ジブチルヒドロキシトルエン(以下、BHT)という化学物質は、食品添加物に認められています。BHTの優れた抗酸化作用ゆえに、食品を長持ちさせる保存剤として用いられます。長持ちを言い換えれば、腐らせないことになります。腐るとは、空気中の酸素が食品を別の物質に変えることですので、酸化そのものです。BHTは酸素の働きを封じますので、食品を酸化させない抗酸化作用が出現します。
BHTが人工的に合成された物質なら、自然界に存在する天然物としての抗酸化剤は、ケルセチンが代表的です。それならばBHTとケルセチンとを組合わせて、食品をより長持ちさせることは出来ないものか?そんな素朴な疑問に答えたのが、本研究です。
BHTとケルセチンの混合比率を、3:1, 1:1, 1:3, 1:5, 1:10に変えて、組合せの抗酸化作用を調べました。その結果、1:5の時に両者の相互作用が最大限になることが分かりました。
最適な混合比率を確定したので、本実験として、牛肉パテの保存に応用します。パテはひき肉を固めた、ハンバーグを焼く前の生肉の状態をイメージして下さい。牛肉パテ1 kgに対してBHTが5.2 mg、ケルセチンが26.0 mgとなるように添加して、比率1:5を保ちました。4℃で10日間保存した際の変化を調べます。パテ中に存在するミオグロビンという蛋白質が酸化されると、メトミオグロビンという別の蛋白質に変わり、肉は褐色にくすみます。保存前のパテには、メトミオグロビンは15%程ありましたが、保存剤がないと10日後には60%に上昇しました。組合せの添加は25~30%に抑えました。チオバルビツール酸反応性物質とは、酸化で上昇する物質の総称ですが、0.3 ppmでスタートしました。添加物なしでは1.4 pmに上昇したところを、組合せの添加では0.6 ppmでした。
面白いことに、この2種類の評価項目とも、BHTの単独添加(100 mg/kg)およびケルセチンの単独添加(36 mg/kg)と同等の結果でした。従って、BHT・ケルセチンともに大幅に使用量を削減することが出来ました。
キーワード: BHT、ケルセチン、牛肉パテ、食品添加物、保存剤、抗酸化作用