ケルセチンの糖尿病性腎症に対する効果のメタ解析
出典: European Journal of Pharmacology 2022, 921, 174868
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0014299922001297
著者: Xiao Feng, Fan Bu, Liguo Huang, Weilong Xu, Wenbin Wang, Quan Wu
概要: 糖尿病にかかると、腎臓が悪くなることが多く、糖尿病性腎症と呼ばれています。ケルセチンの優れた糖尿病性腎症に対する効果は、別のトピックでも述べた通りです。https://health.alps-pharm.co.jp/topics/2324/
今回の研究では、今まで報告された、ケルセチンの糖尿病性腎症に対する効果を動物実験で示した論文を集めました。そこにあるデータを統合して、統計的に解析しました。この手法をメタ解析と呼びますが、バラバラに存在する証拠をつなぎ合わせる意味で、より強いレベルの証拠が得られます。
まず、各種の論文データベースを検索して、57件のヒットを得ました。この中から、ケルセチンを含む複数成分を投与した実験では、本当にケルセチンが効いているのか分からないので除外しました。また、鍵になるデータが記載されていない論文も除外し、20件の論文をメタ解析の対象にしました。
クレアチニンという老廃物は全身で作られますが、血液で腎臓に運ばれます。その後、尿と一緒に排泄されます。血液中にクレアチニンが残っていれば、血液から不要物を除去する腎臓の機能が正常でないことを意味します。ゆえに、血中クレアチニン濃度は腎機能の重要な指標です。糖尿病性腎症への効果を述べた論文だけに、20件の全てで血中クレアチニン濃度のデータを記載しています。これをメタ解析してなお、糖尿病性腎症のモデル動物にケルセチンを投与すると、血中クレアチニン濃度が下がり腎機能を改善する、という結論になりました。
メタ解析した項目は、これだけではありません。クレアチニンと同様に、血中の尿素があります。尿素という言葉どおり、尿の主成分ですので、血液に残れば腎機能が低下しています。アルブミンという蛋白質は、血液中で水分の調節を担います。血液に必須のアルブミンが尿で排出されたら、腎臓の間違った働きを意味しますので、尿中アルブミンも腎機能の指標になります。血中尿素も、尿中アルブミンもケルセチンによる減少が、メタ解析で示されました。
これだけ動物実験で証拠が強化されれば、ヒトでの試験が開始される日も近いと思われます。
キーワード: 糖尿病性腎症、ケルセチン、動物実験、メタ解析、クレアチニン