ベルベリスの果実抽出物は、マウスの関節リウマチを軽減する
出典: Inflammopharmacology 2022, 30, 655–666
https://link.springer.com/article/10.1007/s10787-022-00941-z
著者: Anamika Sharma, Narendra Vijay Tirpude, Neha Bhardwaj, Dinesh Kumar, Yogendra Padwad
概要: インドの北西部ヒマラヤ山脈の斜面に、ベルベリスというメギ科の植物が自生しています。そのベルベリスの果実の抽出物(以下BLFE)が、関節リウマチに効くことをマウスで実証した研究です。
II型コラーゲン100 μgとフロイント完全アジュバントと呼ばれる牛酪菌の死菌体50 μgをマウスの尾の付け根に注射すると、炎症が誘発され、ヒトの関節リウマチと類似した状態になります。21日後には半分の量を再び注射して、その後21日間、BLFEを飲ませて薬効を評価しました。BLFE処置しないマウスは、皮質骨(骨の表面を構成する部分で、硬くて緻密な骨)の全層を失い、骨の中心部である骨髄まで浸食が及びました。また、滑膜(関節の内側を覆う膜)が異常に増殖し、関節腔(骨と骨の隙間)が縮小しました。しかし、BLFEを飲ませたマウスでは、骨浸食は最小限かつ炎症は関節周囲のみに限定され、リウマチの症状を著しく改善しました。
BLFEを分析したところ、主成分はベルベリンとルチンであることが分かりました。ベルベリンとルチンのそれぞれを関節リウマチのマウスに投与したところ、BLFEと同様の改善効果を示しました。関節の組織を採取して、炎症に関する蛋白質の動向を調べたところ、若干の違いはあるにせよ、BLFE・ベルベリン・ルチンはおおむね同じ結果を与えました。従って、BLFEの効果は、ベルベリンとルチンの関節リウマチの軽減作用と結論できます。
なお、ルチンはケルセチンの類似物質の一つで、ケルセチンに2個の糖が結合した形です。また、ベルベリンは下痢の薬として汎用されており、その名の通り、ベルベリスから作られます。ただし、ベルベリスの根と茎が原料となり、果実を使うことはありません。根と茎にはルチンの含量が低いため、高純度なベルベリンを得るには、果実より根や茎を使う方が有利だからです。いずれにせよ、下痢の薬が関節リウマチにも効くことを見出したのは、素晴らしい発見です。
キーワード: ベルベリス果実、関節リウマチ、マウス、ベルベリン、ルチン