社会的な敗北ストレスに起因する社交性の欠損は、ケルセチンが予防する
出典: Brain Research Bulletin 2022, 183, 127–141
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0361923022000740
著者: Princewill Ikechukwu Ugwu, Benneth Ben-Azu, Sandra Ugonne Ugwu, et al.
概要: 今回の研究では、ケルセチンの予防効果が検証されました。予めケルセチンを飲んだマウスは、その後に社会的な敗北ストレスを与えても、社交性が失われないことが示されました。
25~30 gのオスマウスに14日間、25~100 mg/kgのケルセチンを1日1回飲ませます。7~14日目には、ケルセチンを与えた直後に、20分間のストレスを与えました。ストレスの与え方ですが、30~35 g、すなわち被検マウスより一回り体の大きいオスマウスの住まいに入れます。相手のマウスはメスマウスと20日間一緒に暮らしていましたが、パートナーと離された上、見知らぬオスが突然入って来れば、自分の生活を守るべく攻撃的になります。10分間の身体的な接触の後、金網越しに10分間向合います。ここでも相手のオスは攻撃的な発声をします。自分より体の大きな相手に、前半は肉体的に攻撃され、後半は心理的な攻撃を受けるので、社会的な敗北ストレスが構築されます。しかも、7日間、全て異なるオスを相手にすることになります。
14日目に、社交性の試験を行いました。比較のために、ケルセチンを飲ませずストレスも与えない正常なマウスと、ケルセチンを飲ませずストレスを与えたマウスも、同時に試験しました。被検マウスを別のマウスと一緒のスペースに入れた時の行動を調べました。身体的な接触、後を追いかける、においを嗅ぐ、毛づくろいをする、こうした行動を社会的相互作用と定義しました。一定の時間内で、正常なマウスの社会的相互作用は70%でした。一方、ケルセチンを飲まないでストレスを与えた場合は40%以下で、社交性の欠損が明確です。ケルセチンを25 mg/kg飲んだマウスは、60%に上昇しました。50および100 mg/kgの投与量では70%で、正常と変わらない結果でした。25~50 mg/kgでは用量に比例して社会的相互作用が増えましたが、50 mg/kg以降では頭打ちになりました。
ストレスの多い生活では社交性が失われることはマウスにも人間にも共通するようですが、それを予防できるケルセチンのパワーには注目したい所です。
キーワード: マウス、社会的敗北、ストレス、社交性、社会的相互作用、ケルセチン