ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

キンミズヒキは直結腸癌の転移を阻止するが、ケルセチンとケルシトリンが関与する

出典: Pharmaceuticals 2022, 15, 364

https://www.mdpi.com/1424-8247/15/3/364/htm

著者: Nguyet-Tran Trinh, Thi Minh Ngoc Nguyen, Jong-In Yook, Sang-Gun Ahn, Soo-A Kim

 

概要: 癌が厄介な病気であるのは、転移があるためです。例えば肺癌は肺に生じた癌ですが、遠隔の組織である脳が癌になる場合もあります。これを肺癌の脳転位と呼びます。細胞が別の場所に移動することを遊走と呼び、周囲の正常組織に入り込むことを浸潤と呼びます。この遊走と浸潤は、正常細胞にはなく癌細胞が示す現象で、癌の転移の根底をなします。従って、癌細胞の遊走と浸潤を阻害する物質を探索することが、癌の治療薬の発見の第一歩となります。

今回の研究は、バラ科の植物キンミズヒキの根から、結直腸癌細胞の遊走と浸潤を阻害する物質を新たに見つけました。

キンミズヒキの根の抽出物を液体クロマトグラフィーという分離装置に付し、水に対する馴染みやすさの違いで12分画に区分しました。キンミズヒキの根の抽出物の成分の、最も水に馴染むグループを分画1とし、最も馴染みにくい分画12まで、計12個に分割しました。分画4すなわち4番目に水に馴染む成分が、RKOという癌細胞の遊走と浸潤を阻害しました。分画4を分析した結果、ケルセチンとケルシトリンが含まれていました。ケルシトリンとは、ケルセチンに糖が1個結合した形の類似物質です。そこで改めて、ケルセチンとケルシトリンをそれぞれ単独で試験したところ、分画4と同様に、RKOの遊走と浸潤を阻害しました。これで、キンミズヒキに存在する癌転移に効く成分は、ケルセチンとケルシトリンであると結論できました。

次に動物実験で更なる効果を確かめました。先程の実験で用いた結直腸癌細胞のRKOをマウスに注射すると、背中に腫瘍ができました。何も処置しないマウスの腫瘍組織は日を追うごとに大きくなり、2週間後には3倍になりました。それに対し、分画4・ケルセチン・ケルシトリンを飲ませたマウスはいずれも、腫瘍組織の拡張が阻止されました。3種の中では、ケルセチンが最も良好な結果を与えました。

キーワード: キンミズヒキ、癌転移、癌細胞、遊走、浸潤、ケルセチン、ケルシトリン