ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは顆粒膜細胞の小胞体ストレスを軽減して、不妊症の原因を取り除く

出典: Animals 2022, 12, 787

https://www.mdpi.com/2076-2615/12/6/787/htm

著者: Weihan Yang, Runfeng Liu, Qinqiang Sun, Xingchen Huang, Junjun Zhang, Liangfeng Huang, Pengfei Zhang, Ming Zhang, Qiang Fu

 

概要: 小胞体とは細胞内に存在して、主に蛋白質の合成を担う器官です。合成された蛋白質は小胞体の中で所定の形に折りたたまれますが、何らかの原因で正しく折りたたまれない場合もあります。正常の形でない蛋白質を変性蛋白質と呼びますが、これが小胞体に蓄積すると細胞に悪影響を与えます。この悪影響を総称して、小胞体ストレスと言います。

今回の研究では、ケルセチンが小胞体ストレスを軽減する現象が見出され、その仕組みが新たに解明されました。

実験には、水牛の顆粒膜細胞を用いました。顆粒膜とは未授精卵を包んでいる膜のことで、それを構成する細胞が顆粒膜細胞です。この顆粒膜細胞にツニカマイシンという化学物質を作用すると、小胞体ストレスを誘発しました。その結果、顆粒膜細胞はアポトーシスと呼ばれる細胞死を引き起こしました。アポトーシスはプログラム化された細胞死、すなわち予め予定されている自然死のことです。例えば、オタマジャクシがカエルに成長する際の、尻尾の消滅を思い浮かべて下さい。まさに、尻尾を構成する細胞一つ一つが、予定されていた自然死を迎えます。顆粒膜細胞にアポトーシスが起これば、オタマジャクシの尻尾が消滅するごとく包んでいる膜が消滅するので、受精の機会を失い不妊症の原因になります。

しかし、ケルセチンで処置した顆粒膜細胞では、たとえ小胞体ストレスを与えてもアポトーシスが抑制できました。顆粒膜細胞を詳しく調べたところ、ケルセチンにはアポトーシスを誘導する遺伝子が発現することを抑制する働きがありました。同時に、アポトーシスを起こさなくする反アポトーシス性遺伝子の発現は、ケルセチンが促進しました。従って、ケルセチンが不妊症の原因を取り除く仕組みが明らかになりました。

キーワード: 顆粒膜細胞、小胞体ストレス、アポトーシス、不妊症、ケルセチン