ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは、食品接触面におけるサルモネラ菌のバイオフィルム形成を抑制する

出典: Foods 2022, 11, 977

https://www.mdpi.com/2304-8158/11/7/977

著者: Pantu Kumar Roy, Min Gyu Song, Shin Young Park

 

概要: バイオフィルムとは、固体の表面に作られる微生物の集合体です。例えば、浴室や台所のぬめり(排水口に見られるヌルヌル)、口に中にできる歯垢もバイオフィルムです。バイオフィルムは食中毒の原因となり、食品に発生させない対策が必要です。特に加工食品の場合、加工工程において原材料・包装材・機械・作業員にに発生したバイオフィルムが食品を汚染するリスクを考慮します。

今回の研究では、食中毒の要因として知られているサルモネラ菌のバイオフィルム形成を、ケルセチンが抑えることが発見されました。食品への混入対策を念頭に置いて、食品接触面、具体的には食品加工業で汎用されるゴム手袋でのバイオフィルム形成を対象にした研究です。

まず、ケルセチンのサルモネラ菌に対する最小発育阻止濃度(MIC)を250 μg/mLと決定しました。MICとは、抗菌力の強さを示す指標です。それ以上の濃度では、その菌類は発育できません。

次にMICより薄いケルセチン濃度、すなわち250 μg/mL以下におけるサルモネラ菌の挙動を調べました。MIC以下ですので、サルモネラ菌は発育できますが、集団で動く距離に影響を与えました。ケルセチンを添加しないと75 mmの移動距離でしたが、MICの1/8 (31.25 μg/mL)のケルセチンを添加したところ60 mmに縮みました。これが1/4 (62.5 μg/mL)では39 mm、1/2 (125 μg/mL)では21 mmと、濃度の増加につれてサルモネラ菌の集団移動距離が低下しました。

集団での動きを低下できれば、バイオフィルムの形成にも影響することが期待でき、本実験に入りました。ゴム手袋にサルモネラ菌の培養液を塗り、24時間経過すると、1 cm四方の中に約100万個のコロニー(集団)を感知しました。同様の条件に、MICの1/2 (125 μg/mL)の濃度でケルセチンを加えた場合のコロニーは約1万個で、ケルセチンを加えない場合の1/100になりました。

もちろん、MICでは発育できなくなりますが、その半分の濃度であってもバイオフィルムの形成を抑制し、ケルセチンは食中毒対策にも有効であることが分かりました。

キーワード: バイオフィルム、食中毒、サルモネラ菌、最小発育阻止濃度、ケルセチン