ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは、ジクロフェナクが誘発した腎損傷を軽減する

出典: European Journal of Inflammation 2022, 20, 10.1177/1721727X221086530

https://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1721727X221086530

著者: Farzad Izak-Shirian, Maryam Najafi-Asl, Behzad Azami, Esfandiar Heidarian, Mohammad Najafi, Mansoor Khaledi, Ali Nouri

 

概要: ジクロフェナクという、広く使われている痛み止めの薬があります。痛風・尿路結石・片頭痛・歯痛には飲み薬があり、関節炎や筋肉痛には塗り薬や湿布薬もあり、多種多様な痛みに対応できます。しかし、腎機能障害がある人にジクロフェナクが禁忌となっており、腎臓に副作用があることも、また事実です。今回の研究では、ジクロフェナクを大量に飲ませたラットに起きた腎臓の損傷と炎症を、ケルセチンが軽減することが発見されました。

ラットに50 mg/kgのジクロフェナクを飲ませると、腎組織に大量のリンパ球が入り込みました。リンパ球の役割は炎症の緩和ですので、それだけ腎組織に炎症が起きた指標となります。しかし、ジクロフェナクと同時に100 mg/kgのケルセチンを飲ませると、腎組織にリンパ球は殆ど見られず、正常な腎組織を維持できました。

血液検査の結果は、ジクロフェナクのみ飲んだラットには、炎症を誘導する蛋白質が異常に上昇していました。例えばインターロイキン-1βと呼ばれる蛋白質は、代表的な炎症誘導因子です。この血中濃度は、正常なラットで305.9±60.8 pg/mLの所、ジクロフェナクを飲むと664.0±50.8 pg/mLと2倍以上になりました。しかし、ケルセチンの同時投与では369.2±65.9 pg/mLであり、先程の腎組織におけるリンパ球の数の増減と同じようなデータが得られました。

次に、インターロイキン-1βを作る遺伝子の挙動を調べました。正常なラットにおける当該遺伝子の発現量を1とした時の、相対的な変化を比較しました。その結果、ジクロフェナク群では8.2、ケルセチン同時群で1.9でした。この事実は、ケルセチンの存在下では、ジクロフェナクがインターロイキン-1βを増やせなくなることを意味します。

以上、ケルセチンの抗炎症作用は、ジクロフェナクが誘発した腎臓の損傷を効果的に軽減しました。

キーワード: ジクロフェナク、ラット、腎臓、炎症、ケルセチン、リンパ球、インターロイキン-1β