ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは、覚せい剤が原因の不安行動を改善する

出典: Frontiers in Molecular Neuroscience 2022, 15, 829886

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnmol.2022.829886/full

著者: Fengrong Chen, Jiaxue Sun, Cheng Chen, Yongjin Zhang, Lei Zou, Zunyue Zhang, Minghui Chen, Hongjin Wu, Weiwei Tian, Yu Liu, Yu Xu, Huayou Luo, Mei Zhu, Juehua Yu, Qian Wang, Kunhua Wang

 

概要: 覚せい剤は一時的に精神を高揚させますが、効果が薄れると様々な禁断症状が現れます。禁断症状の一つに不安感がありますが、解消するために次の覚せい剤に手を出すことが繰り返されると、依存性の原因となります。今回の研究では、ケルセチンが覚せい剤による不安行動を軽減することを、マウスを用いる実験で検証しました。

不安行動は、高架式十字迷路試験という方法で評価されました。床から高さ55 cmの所に、マウスが通れる長さ60 cm、幅5 cmの道を真ん中で十字に交差させます。片方の道には高さ15 cmの壁が両側にあり、周囲が見えません。もう片方の道には壁がなく、周囲の景色が見渡せます。マウスの習性として、新しい環境に探索欲求を示せば、開かれた方の道を行来します。一方、不安を感じたマウスは、高く開放された空間よりも閉ざされた場所を好み、壁のある道の定在時間が増えます。まずマウスを交差点に置き、その後5分間の行動を調べました。正常なマウスは、開かれた道を歩いた距離が2~6 mで、時間では25~70秒間でした。覚せい剤を飲ませたマウスは、1~3 mと15~30秒間に縮小して、不安行動を示しました。覚せい剤と同時にケルセチンを飲ませると、2.5~5 mと18~55秒間に改善され、正常に近づいたことが分かります。

不安行動はまた、オープンフィールド試験という方法でも検証されました。縦横が50 cmで周囲に40 cmの壁がある箱にマウスを入れた時の行動を調べます。マウスの習性に従えば真ん中の20 cm四方を歩き回りますが、不安感があると壁に張り付くようになります。真ん中を歩いた距離は、正常マウスが1.5~3 mで、覚せい剤マウスが0.5~1.7 mで、覚せい剤とケルセチンのマウスが1.4~3.5 mで、先程の高架式十字迷路試験と同様のデータが得られました。

以上の結果は、ケルセチンの効果を示していますが、それでも覚せい剤は「ダメ!ゼッタイ」です。

キーワード: 覚せい剤、不安行動、ケルセチン、高架式十字迷路試験、オープンフィールド試験