ケルセチンは間接的な抗イリドウィルス作用を発揮する
出典: Fish & Shellfish Immunology 2022, 124, 372-379
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1050464822001966
著者: Lin Huang, Mengmeng Li, Hongling Wei, Qing Yu, Shuaishuai Huang, Taixia Wang, Mingzhu Liu, Pengfei Li
概要: スズキ目のハタという魚は、体長1メートルを超える大型の海水魚です。ハタは食用魚ゆえイリドウィルスによる病死は、水産業に打撃を与える深刻な問題です。今回の研究では、ケルセチンがハタイリドウィルスに効力を示しながら、間接的な作用であることが明らかになりました。余談ながら、秋田県名産のハタハタは、同じスズキ目でも、体長は20センチ程度でハタとは別の魚です。
シンガポール産のハタの細胞を、2通りの条件で培養しました。片方は12.5 μg/mLの濃度のケルセチンで処置して、もう片方はケルセチンを添加しません。その後、イリドウィルスに感染させて経過を観察しました。ケルセチンの処置は、処置なしの細胞と比べて顕著に、ウィルスの増殖を阻止しました。細胞レベルだけでなく、個体のハタを用いた実験でも、同様の結果が得られました。すなわち、ケルセチンを飲んだハタの肝臓や脾臓では、感染後から時間が経つにつれイリドウィルスが減少しました。反対にケルセチンを飲まないと、ウィルスの個数は右肩上がりに上昇しました。
ケルセチン処置した細胞と処置なし細胞を比較したところ、遺伝子の違いが分かりました。インターフェロンという抗ウィルス物質を作る遺伝子の6種類が、ケルセチン処置によって大幅に上昇しました。インターフェロンはリンパ球が分泌してウィルスに対抗しますが、人工的に作ることも可能で、実際にC型肝炎の治療薬として使われています。肝炎ウィルスの除去に効力を発揮します。
このインターフェロンをハタの細胞内に作らせることを、ケルセチンが促進しました。ケルセチンは直接イリドウィルスを死滅させることはありませんが、インターフェロンを盛んに作らせる働きがありました。その結果、細胞でもハタの体内でもイリドウィルスがの減少が観察されました。
まさにケルセチンは、間接的に抗イリドウィルス作用を発揮して、ハタを守ったと言えましょう。
キーワード: ハタ、イリドウィルス、ケルセチン、インターフェロン、遺伝子