ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

熱処理で微粒子化したケルセチンは、抗インフルエンザウィルス作用が増強する

出典: Journal of Colloid and Interface Science 2022, 622, 481-493

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0021979722006932

著者: Hung-Yun Lin, Yu-Ting Zeng, Chin-Jung Lin, Scott G. Harroun, Anisha Anand, Lung Chang, Chang-Jer Wu, Han-Jia Lin, Chih-Ching Huang

 

概要: ケルセチンを230~290℃で2時間熱処理して部分的に炭化した後、超音波を照射して微粒子に加工しました。炭化した部分は膜のような構造に変化したので、膜で包み込んだケルセチンの微粒子が得られました。今回の研究では、このケルセチン微粒子が通常のケルセチンと比べて、インフルエンザウィルスへの効力が大幅に増強したことが示されました。

まず、熱履歴と抗ウィルス活性との関係を調べました。インフルエンザウィルスの培養液に、それぞれの試料を添加して、ウィルスが半分死滅した時の濃度を記録します。熱処理しない通常のケルセチンは4.0 μg/mLの濃度が該当しました。230℃で処置したケルセチン微粒子は4.3 μg/mLの濃度で半分のインフルエンザウィルスが死滅し、以下、250℃が1.6 μg/mL、270℃が0.7 μg/mL、290℃が4.4 μg/mLというデータを得ました。濃度が低い程、同じ効力を示すのにより少量のケルセチンで済む訳ですから、より活性が強いことを意味します。故に、270℃で2時間の熱処理が最適条件で、抗インフルエンザウィルス活性を、通常のケルセチンの約6倍にまで増強しました。

次に、270℃で熱処理したケルセチン微粒子と通常のケルセチンを、それぞれ吸入薬に加工して、薬効を比較しました。インフルエンザウィルスに感染したマウスに、吸入薬を1日1回、鼻に噴霧しました。感染後7日目でケルセチンの吸入を止めましたが、微粒子を吸入したマウスは12匹全部が、14日目までの1週間生存していました。一方、通常のケルセチンを吸入したマウスは、12匹の内3匹が6日目に死亡し、8日目には更に3匹の死亡で6匹に減り、9日目には2匹に減り、11日目には全滅しました。また、吸入しないマウスも、通常のケルセチンと同様の減り方でした。

同じケルセチンでも、ここまで薬効が違うのは、形状が原因です。吸入薬として効果を発揮するには、微粒子化していることの必要性を、今回の結果が端的に示しています。

キーワード: ケルセチン、熱処理、微粒子、インフルエンザウィルス、吸入薬