高齢者のケルセチン摂取は、生活習慣病の危険因子と老化の指標を低減する
出典: Ageing and Longevity 2022, 3, 32-40
http://aging-longevity.org.ua/index.php/journal-description/article/view/49
著者: Valeri Shatilo, Ivanna Antoniuk-Shcheglova, Svitlana Naskalova, Olena Bondarenko, Oksana Hrib, Dmitry Krasnienkov, Anatoly Pisaruk
概要: 今回の研究では、メタボリックシンドロームの患者がケルセチンを摂取すると、糖尿病や動脈硬化などの生活習慣病の危険因子を減らして、さらには老化の指標も減少することが実証されました。
60~74歳のメタボリックシンドローム患者110名を対象としました。無作為に2群に分け、片方の55名はケルセチン240 mg/dayを摂取し、残りの55名はケルセチンを摂取せず比較対照としました。3か月間の摂取期間の前後に、糖尿病の検査と血液検査を行い、改善具合を比較しました。
糖尿病の検査は、経口ブドウ糖負荷試験を行いました。ブドウ糖を飲んで、血液中のブドウ糖の濃度を測定します。栄養分であるブドウ糖は血液を介して全身に運ばれますが、糖尿病になると、各組織が利用できず、いつまでも血中に残っています。ケルセチン群のデータは摂取前と後で、0.76 nmol/L程下がりましたが、比較対照群では全く変化がありませんでした。血液検査の結果は、ケルセチン群の悪玉コレステロールは顕著に低下しましたが、比較対照群では改善されませんでした。
血液検査ではコレステロールだけでなく、白血球の中身を詳しく調べました。白血球に限らず細胞の染色体には、その両端にテロメアと呼ばれる部分があり、染色体を守るカバーのような役を果たします。細胞分裂をするたびに、このテロメアは少しずつすり減ります。そしてテロメアが一定の長さに達すると、その細胞はもはや細胞分裂による増殖が不可能となります。従って、テロメアの長さは老化のバロメータと見なすことができ、短いほど老化が進行しています。比較対照群の白血球テロメアは、摂取期間の前後で0.77のままで変化がありませんでした。一方、ケルセチン群は摂取期間前が0.71だったのが、摂取後には0.78まで伸びました。
以上の結果は、糖尿病やコレステロールの危険因子に加え、白血球テロメアという老化の指標までもケルセチンの摂取で低減したことを意味します。
キーワード: ケルセチン、危険因子、糖尿病、コレステロール、老化、白血球、テロメア