発熱時にはケルセチンの摂取を避けた方がよい
出典: Life Sciences 2022, 302, 120647
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0024320522003472
著者: Moamen Adel Mashaly, Ibrahim Ghalib Saleh, Ahmed Amine Ashour, Ahmed Mohamed Mansour
概要: この連載ではケルセチンによる健康の増進を述べていますが、反って逆効果となるケースも時には見られます。今回の研究では、発熱時にケルセチンを摂取すると、肝臓に害を及ぼすことがマウスを用いる実験で明らかになりました。
リポ多糖という細菌由来の毒素をマウスに投与して、毒性が発現する領域を調べました。リポ多糖4 mg/kgの投与では5日後の生存率が40%でしたが、3 mg/kgでは80%でした。リポ多糖を2および1.5 mg/kgに減らすと、いずれも5日後にはすべて生存しており、毒性が出ない上限は2 mg/kgであることが分かりました。5日間のマウスの体温は、リポ多糖を与えないと36.6~36.5℃、1.5 mg/kgのリポ多糖で37.4~37.6℃、4 mg/kgでは39.0~39.3℃でした。ヒトの体温とほぼ同等であることが分かります。
従って、1.5 mg/kgのリポ多糖を与えたマウスは、「死に至らないが、発熱した状態」のシミュレーションであり、この時のケルセチンを飲ませた時の挙動を調べました。リポ多糖を投与して24時間後にケルセチンを飲ませ、以後5日間、20~40 mg/kgのケルセチンを毎日飲ませます。20 mg/kgのケルセチンでは、5日間の生存率が100%でした。ところが、30 mg/kgのケルセチンでは5日後の生存率が80%で、40 mg/kg では75%と、明らかに毒性が見られました。
次に、マウスを以下の4群に分けました; 1) 何も投与しない、2) リポ多糖1.5 mg/kg投与のみで5日間のケルセチン投与なし、3) ケルセチン20 mg/kgのみ投与、4) リポ多糖とケルセチンを両方投与(100%の生存率を示した時と同じ条件)。健康診断で肝機能検査の指標としている、血液中のALT・AST・ALPを調べました。グループ1~3で変化はありませんでしたが、4だけは上昇しており、肝機能の低下を示しました。また、肝組織の炎症は、4のみに見られました。
以上の結果より、発熱時には、ケルセチンの摂取を避けた方が賢明と言えましょう。
キーワード: リポ多糖、発熱、ケルセチン、肝毒性