ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ルチンはまず腸内細菌叢を整え、その結果として肥満が抑制される

出典: Molecular Nutrition & Food Research 2022, 66, 2100948

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/mnfr.202100948

著者: Xu Yan, Yuanyuan Zhai, Wenling Zhou, Yuan Qiao, Lingling Guan, Hao Liu, Jizhi Jiang, Liang Peng

 

概要: ケルセチンの類似物質の一つに、ルチンがあります。ケルセチンに2個の糖が結合した形です。今回の研究では、ルチンが肥満を抑制する仕組みが、マウスを用いる動物実験で解明されました。

マウスを2群に分け、片方は脂肪分を多く含む餌を与え続けます。もう片方は同じ餌を与えますが、毎日ルチンを飲ませす。当然ながら16週間後には高脂肪食のみのマウスは、肥満になりました。しかし、ルチンを飲んだマウスは、同じ餌を食べたのも拘わらず、体重の増加と血中の中性脂肪の上昇が抑制されました。脂肪組織を構成する細胞の肥大と炎症は、肥満に見られる典型的な特徴です。両群を比べると、ルチン群の方が脂肪細胞のサイズが小さく、炎症誘導物質も少なめでした。また、高脂肪食では、肥満に加えて糖尿病の兆候も見られましたが、ルチンは悪化を最小限に抑え込みました。

腸内細菌叢(生息する細菌類の分布)を調べたところ、高脂肪食には、正常とは明らかに違う傾向が見られました。すなわち、ファーミキューテス門が減少し、バクテロイデス門が増大していました。しかし、ルチン群にはこのバランス異常がなく、正常なマウスと同様の腸内細菌叢が見られました。

一見、腸内細菌叢と肥満とには関連がなさそうですが、実際はどうなっているか解明すべく、第2の実験を行いました。高脂肪食を8週間与え続けたマウスを2つに分け、片方は抗生物質で処置をして、腸内にある内因性の細菌を失くしました。もう片方は、抗生物質処置を省略して、腸内細菌叢はそのままに保ちます。その後、第1の実験と同様の高脂肪食とルチンの効果を比較しました。面白いことに、抗生物質処置したマウスはルチンを飲んでも肥満になり、効果がなくなりました。

しかし、抗生物質処理後に、第1の実験でルチンを飲んで効果の出たマウスの糞便を腸に移植すると、ルチンの効果が復活して、見事に肥満を抑制できました。

以上の結果は、ルチン・腸内細菌叢・肥満抑制の因果関係を明確に物語っています。すなわち、まずルチンはマウスの腸内細菌叢を整え、その結果として、高脂肪食による肥満が抑制されました。

キーワード: ルチン、高脂肪食、肥満、腸内細菌叢、マウス