ケルセチンが有する発癌予防作用は、慢性的で予測不可能なストレスが弱める
出典: Toxicology and Environmental Health Sciences 2022, 14, 213–222
https://link.springer.com/article/10.1007/s13530-022-00132-x
著者: Nida Suhail, Sabiha Fatima, Ashwag Saleh Alsharidah, Tehreem Aftab, Naheed Banu
概要: 今回の研究では、ケルセチンがマウスの皮膚癌の発症を予防する効果が示されました。同時に、慢性的で予測不可能なストレスを与えたマウスでは、ケルセチンの予防効果が弱まってしまうことも併せて発見されました。
マウスの背中の毛を剃り、そこへ発癌性の化学物質を塗ります。その後、別の発癌促進物質を週1回のペースで塗りました。ケルセチンの効果を調べるために、同じ処置で皮膚癌を発症させますが、毎日ケルセチンを飲ませました。ケルセチンを飲まないマウスは、8週間後に腫瘍が発生し始め、16週間には腫瘍の累積が23個に達しました。一方、ケルセチンを飲んだマウスでは、最初の腫瘍発生が10週間後で、16週間の累積腫瘍数は7個でした。両者を比較すると、ケルセチンが皮膚癌の発症を有意に抑制しました。
次に、慢性的で予測不可能なストレスの影響を検証しました。ストレスの与え方は以下のとおりです。1日目には体を1時間拘束し、2日目には冷水に5分間入れ、3日目にはマウスで混み合った場所に3時間入れ、4日目は1日中光を照らし、5日目は4℃の寒い場所に30分間入れ、6日目には6時間の単独放置、7日目は16時間の絶食…というような日替で異なるストレスを与えます。そして、毎日のストレスの後にケルセチンを飲ませました。もちろん、週1回の発癌促進物質の処置も継続します。この慢性的で予測不可能なストレスの影響として、腫瘍の発生時期が9週間後で、16週間の累積腫瘍数は10個でした。先程のストレスを与えない時における、ケルセチン投与の有無のデータの中間の領域に入ります。よって、ストレスは、ケルセチンが持つ発癌予防効果を弱めました。
さらに、ストレスを与えケルセチンも飲まない場合は、6週間で腫瘍が発生し、16週間の累積腫瘍数は31個でした。化学物質による発癌を、ストレスが加速したことを端的に示しています。
今回の結果は、私たちに多くのヒントを提供しました。野菜や果物から多くのケルセチンを摂取することと同じ位、ストレスをためないことが癌予防には重要です。
キーワード: 皮膚癌、発癌予防、ケルセチン、ストレス、マウス