手術後にケルセチンを点眼すると、角膜の傷跡が低減する
出典: Metabolites 2022, 12, 626
https://www.mdpi.com/2218-1989/12/7/626
著者: Tina B. McKay, Pouriska B. Kivanany, Sarah E. Nicholas, Okhil K. Nag, Michael H. Elliott, W. Matthew Petroll, Dimitrios Karamichos
概要: 角膜とは眼の黒い部分のことで、外界と接しているため傷つきやすい特徴があります。特に怪我や手術の後には、しばしば角膜に傷跡が残ります。今回の研究では、手術した直後の角膜にケルセチンを点眼すると、その後の傷跡を低減することが証明されました。
目薬に使う基剤液にケルセチンを溶かし、0.5, 1, 5, 50 mMの各濃度の点眼液を調製しました。マウスの角膜表面に、直径1.5 mmの円形を切り取る手術を行い、その直後に各種濃度のケルセチン溶液を点眼しました。また比較対照として、ケルセチンが溶けていない基剤液のみを点眼したグループも含めました。手術後3週間に渡り、経過を観察しました。その結果、5 mMのケルセチン溶液を点眼したマウスが、最も傷跡を少なくしたことが分かりました。また、最も傷跡が残ったマウスは、基剤液のみの点眼でした。この事実から、傷跡の軽減に寄与した成分は基剤液ではなく、ケルセチンであることが示されました。
ケルセチンの最適濃度が5 mMであることが分かりましたので、濃度を5 mMに固定して、次の実験を行いました。今度はウサギを用いる実験で、先程のマウスよりは広範囲にわたって(直径5 mm) 角膜表面を切り取りました。さらに先程と違う点として、手術直後には痛み止めの薬を点眼して、手術後3日間に、ケルセチン溶液を1日2回点眼しました。並行して基剤液のみを点眼した比較対照を設けた点は、先程と同様です。手術した3週間後、角膜の透明度を調べました。その結果、ケルセチン処置した3匹のウサギの内、2匹は基剤液のみの対照と比べて、透明度が大幅に改善されました。しかし、残る1匹は基剤液のみで処置したウサギと同じように、角膜が濁ったままでした。
この通り、ケルセチンは角膜の傷跡に対しては、優れた効果を示しましたが、透明度に関してはまだ改善と進歩の余地が残っています。
キーワード: 角膜、手術、ケルセチン、点眼液、傷跡、マウス、ウサギ