膀胱癌の薬物治療における深刻な副作用である、下部尿路障害の予防
出典: Pathophysiology 2022, 29, 365-373
https://www.mdpi.com/1873-149X/29/3/28
著者: Celeste Manfredi, Lorenzo Spirito, Francesco Paolo Calace, Raffaele Balsamo, Marco Terribile, Marco Stizzo, Lorenzo Romano, Luigi Napolitano, Gianluigi Califano, et al
概要: 膀胱癌の治療には、マイトマイシンという癌の薬を直接膀胱に注射します。この際、下部尿路障害すなわち、尿が出にくくなる排泄障害や逆に出過ぎる頻尿を副作用として伴います。今回の研究では、ケルセチンを含むサプリの服用が、下部尿路障害を予防することが検証されました。
膀胱癌の薬物治療を受けている患者38名をランダムに2群に分け、片方の19名はケルセチンを含むカプセル(他に、ヒアルロン酸・硫酸コンドロイチン・クルクミンを配合)を摂取し、残る19名はプラセボ(見かけは同一のカプセルで有効成分を含まない)を服用して比較対照としました。膀胱への抗癌剤の注射は月に1回行われますが、注射前の1週間と注射後の2週間を摂取期間として、サプリカプセルもしくはプラセボを飲んで頂きます。また、毎月の注射の機会には、前回から今までの1カ月間における自覚症状の聞き取りを行い、下部尿路障害の状況をモニタしました。
自覚症状の質問は、「まだ尿が残っている感じがありましたか」「尿をしている間に何度も尿がとぎれることがありましたか」「尿を我慢するのが難しいことがありましたか」のような質問が7件あります。これに対して「全くない」「5回に1回の割合より少ない」「2回に1回の割合より少ない」「2回に1回の割合」「2回に1回の割合より多い」「ほとんどいつも」で回答し、それぞれ0~5の点数が付きます。全ての項目が「ほとんどいつも」なら合計点数は35点になります。下部尿路障害の度合としては、合計で7点以下なら軽症、8~20点が中等症、21点以上で重症と判断されます。
膀胱癌の治療を開始した時点での平均スコアは、14点でした。膀胱癌が発症する位ですから、ある程度の下部尿路障害があったと言えます。4か月目の平均スコアは、サプリ群が13点、プラセボ群が17点で、差が着き始めました。7か月目にはサプリ群が10点、プラセボ群が18点で、差は決定的となりました。これ以外にも、痛みに関する自覚症状でも、同様の傾向が見られました。
以上、ケルセチンを含むサプリの摂取は、制癌剤の副作用である下部尿路障害を予防しました。
キーワード: 膀胱癌、薬物治療、下部尿路障害、予防、ケルセチン、プラセボ対照