ケルセチンとダサチニブによるフレイルの対処は、開始時期が重要である
出典: eLife 2022, 11, e75492
https://elifesciences.org/articles/75492
著者: Edward Fielder, Tengfei Wan, Ghazaleh Alimohammadiha, Abbas Ishaq, Evon Low, B. Melanie Weigand, George Kelly, Craig Parker, Brigid Griffin, Diana Jurk, et al
概要: フレイルとは、健康な状態と要介護状態の中間にある高齢者を意味します。身体機能や認知機能が低下しますが、適切な処置を行うことで介護を要しない状態を維持する可能性があります。フレイル対策は、高齢者時代を迎えるにあたり、社会全体で向かい合うべき重要な課題です。
今回の研究では、マウスに亜致死量のX線を照射してフレイルのモデルとしました。同時に、ケルセチンとダサチニブによる軽減効果と、その適切な開始時期が検証されました。
5月齢のマウスは平均フレイル指数が0.03でしたが、X線の照射で0.07に上昇しました。フレイル指数とは、身体の衰えと不快感に関して約30の評価項目にて、問題がなければ0、軽度なら0.5、重度なら1をそれぞれ点数化した際の合計点で、数字が大きいほどフレイルが進行しています。15週齢に達した無照射群のフレイル指数は0.12で、自然に体が衰える基準です。一方、15週齢X線照射群では0.21で、数値の大きさだけでなく、0.14ポイントも増加しており、無照射群の0.09増加に比べて上昇速度にも差をつけました。しかし、X線の照射直後に、ケルセチンとダサチニブの組合せを10日間飲ませると、15週齢でのフレイル指数は0.17であり、上昇に歯止めが掛かりました。ケルセチンとダサチニブによる処置の効果はフレイル指数だけではありません。15週齢X線照射群が回転する棒に乗っていられる回転速度は7~13 rpmでしたが、組合せの処置は12~17 rpmで、筋力の向上を認めました。また、肝機能を示すALT値は、組合せの処置で20から12 mU/mLに改善されました。
組合せの処置が遅れた場合の実験も行いました。すなわち12週齢にて、無照射群のフレイル指数が0.09、X線照射群が0.16と両者の違いが明確になった時点で初めて組合せ処置を行いました。15週齢でのフレイル指数は、無照射群が0.13、組合せ処置したX線照射群が0.18、組合せ処置なしX線照射群が0.23と、先程の直後に処置した際と変化は同様でした。しかし、筋力の向上と肝機能改善は見られず、組合せ処置の開始時期の重要性が明らかになりました。
キーワード: フレイル、X線、マウス、ケルセチン、ダサチニブ