ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ルチンとアマランサスとで、カドミウムに汚染された土壌を浄化する

出典: South African Journal of Botany 2022, 149, 582-590

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0254629922003490?via%3Dihub

著者: Na Li, Jiaxin Liu, Li Yang, Yuchen Kang, Yuan Cao, Kuiwei Chen, Hui Sun, Wenqing Chen, Qizhou Dai, Yuji Sakai

 

概要: アマランサスとは、ヒユ科ヒユ属の植物の総称です。一般には雑草としての認識ですが、一部は食用になります。アマランサスの重要な性質として、土壌中のカドミウムを吸収する植物抽出があります。ケルセチンに2個の糖が結合したルチンは、アマランサスのカドミウム吸収作用を増強することが、今回の研究で明らかになりました。

カドミウムはイタイイタイ病の原因物質である事実が示すように、強い毒性があります。体内で活性酸素種を発生し、あらゆる部位に酸化的な損傷をもたらすことが、毒性の本質です。アマランサスが土壌からカドミウムを吸収して体内に移行すれば、アマランサス本体が損傷を受けることが、十分予測されます。それならば、活性酸素種を除去する働きのある、ケルセチンやルチンを作用させればどうなるか、という素朴な疑問に端を発した研究です。

アマランサスを栽培する土壌にカドミウムを加えて、10, 50, 100 mg/kgの各濃度に設定します。カドミウムを加えた5日後に、ルチン5 mg/mLの溶液を葉に散布します。この時、ルチンを散布しないアマランサスを比較対照としました。ルチン処置の3日後に、アマランサスを採取して分析しました。その結果、ルチン処置は、カドミウムの吸収を促進したことが分かりました。土壌のカドミウム濃度10 mg/kgでは、ルチンを散布したアマランサス中のカドミウム量が、散布なしの2.97倍になりました。同様に50 mg/kgで2.97倍、100 mg/kgで2.67倍に達しました。

これだけカドミウムを吸収して毒性は出ないのかという疑問が湧きますが、むしろアマランサスは、成長しました。3条件の濃度いずれにおいても、ルチンを散布してカドミウムを吸収を促進した方が、根・芽ともにより重さが増しています。その裏付けとして、ルチンが抗酸化酵素の活性を増大した事実も確認できました。すなわち、カドミウムが発生する活性酸素種はルチンが除去するので、アマランサスは損傷することなく成長できました。

以上の結果は、ルチンとアマランサスとでカドミウムに汚染された土壌を浄化できるので、地球環境の維持に貢献する可能性を秘めています。

キーワード: アマランサス、ルチン、カドミウム、活性酸素種、土壌浄化