イソケルセチンとヒドロキシアパタイトは、生鮮パパイヤの賞味期限を延ばす
出典: European Food Research and Technology 2022, 248, 2833–2842
https://link.springer.com/article/10.1007/s00217-022-04093-w
著者: Francesca Malvano, Onofrio Corona, Phuong Ly Pham, Luciano Cinquanta, Matteo Pollon, Paola Bambina, Vittorio Farina, Donatella Albanese
概要: スーパーの果物売り場を見ると、カットフルーツの人気が良く分かります。手軽に食べられる上、スイカの様に丸一個では多過ぎて食べきれなくとも適度な分量が確保できます。カットフルーツの鮮度・味・香りを少しでも長く保つべく、様々な方法が考案されています。今回の研究では、ケルセチンに糖が1個結合したイソケルセチンが、有望な結果を与えました。
現在カットフルーツの保存剤としては、海藻類に含まれる食物繊維であるアルギン酸が汎用されています。アルギン酸の効果をさらに高めるべく、抗酸化物質を添加して、空気中の酸素による腐敗の進行を遅らせる検討しました。抗酸化物質には、イソケルセチンとヒドロキシアパタイト(歯や骨の成分)に着目しました。
パパイヤを13.5×12.5×5 cmに切り、冷蔵保存する際の表面処置の方法を比較しました。すなわち、1) アルギン酸溶液のみを塗る場合、2) イソケルセチンを含むアルギン酸溶液を塗る場合、3) イソケルセチンとヒドロキシアパタイトの両方を含むアルギン酸溶液を塗る場合、4) 表面処置なしの4通りを施し、冷蔵庫で14日間保存しました。
パパイヤの重さの減り具合は、4)が7%であったのに対し、2)は10%と減量を促進しましたが、1)と3)は5%に抑制することが出来ました。イソケルセチンはマイナスに作用しましたが、アルギン酸とヒドロキシアパタイトはプラスに作用しています。保存前を100%とした時の糖分は、1)が50%と大幅に減少しましたが、2)が80%、3)が85%、4)が90%と、組合せの効果が顕著に見られました。外から力を加えた際の形の保持で硬度を評価しました。耐久圧力はいずれも減少して、1)~4)のそれぞれで83%・76%・73%・44%でした。ここでも組合せが、硬度の減少に歯止めを掛けています。香り成分であるベンジルイソチオシアナートの含量は、保存前の10.0 μg/kgが、1)で1.3 μg/kgに低下したに対して、2)は8.1 μg/kg、3)は10.9 μg/kg、4)は7.5 μg/kgでした。
ベスト条件は各項目でまちまちな点が悩ましい所ですが、イソケルセチンとヒドロキシアパタイトとの組合せが、現在のアルギン酸の効果を増強する傾向が見られました。
キーワード: パパイヤ、冷蔵保存、アルギン酸、イソケルセチン、ヒドロキシアパタイト