ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ルチンはブロイラー雛の成長を促し、腸のバリア機能を強化する

出典: Italian Journal of Animal Science 2022, 21, 1390-1401

https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/1828051X.2022.2116732

著者: Shun Chen, Huijuan Liu, Jiaqi Zhang, Binbin Zhoua, Su Zhuang, Xiaofang He, Tian Wang, Chao Wang

 

概要: ケルセチンやその仲間であるルチン(ケルセチンに2個の糖が結合した構造)は、ヒトだけでなく家畜も元気にします。今回の研究では、生まれたてのブロイラーをルチンを添加した餌で飼育すると、成長を促した上、腸を丈夫にすることが検証されました。

生後1日目の雛を4群に分け、ルチンを0, 250, 500, 1000 mg/kgの各濃度になるように添加した餌を与えて、42日後の状況を比較しました。それぞれの平均体重は、2128, 2237, 2417, 2388 gで、ルチンの添加が成長を促し、しかも500 mg/kgの濃度が最適であることが分かりました。また、この42日間で消費した餌の量は、90.6, 90.6, 94.9, 96.5 gでした。このデータだけでは何を意味するのか分かり難いですが、42日間に増加した体重で割ると、体重1 g増やすのに要した餌の量を示します。これは飼料換算率と呼ばれ、家畜の養成で重要な概念ですが、1.83, 1.74, 1.69, 1.73となりました。養鶏業者さんの目で見ると、ルチンを500 mg/kgの濃度で添加した餌が、最も少ない餌で最も大きなブロイラーを生産するための最適解となるのです。

ルチンはブロイラーの成長のみならず、腸のバリア機能を向上させました。腸は栄養分を吸収するだけでなく、有害な菌や物質は吸収しない働きもあり、バリア機能と呼ばれます。いわば、体を正常に保つために、水際で外敵を防衛するのが腸のバリア機能であり、その中心を担うのが粘膜です。粘膜には絨毛(じゅうもう)と呼ばれる突起物があり、栄養分は取り入れて有害物をはじく選別をしています。ルチン濃度500 mg/kgの餌で飼育したブロイラーは、絨毛の長さ・幅が1314および191 μmで、ルチン非添加時の1118および172 μmに圧倒的な差をつけました。長くかつ太い絨毛は、より強化されたバリア機能を発揮します。ちなみに、250および1000 mg/kgの濃度では、これらの中間値を与えました。また、バリア機能に関連する遺伝子4種類の発現にも、同じように500 > 250 ≒ 1000 > 0 mg/kgの結果となりました。

以上の結果は、ルチンを与えた雛は、大きくかつ丈夫なブロイラーに成長しました。ケルセチンやルチンは、家畜にも役に立つことが実証されました。

キーワード: ルチン、ブロイラー、雛、成長、飼料換算率、腸、バリア機能、絨毛