ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ルチンがII型糖尿病の諸症状を改善した、無作為化二重盲検プラセボ対照試験

出典: Phytotherapy Research 2023, 37, 271-284

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/ptr.7611

著者: Hadi Bazyar, Leila Moradi, Ferdows Zaman, Ahmad Zare Javid

 

概要: 50名のII型糖尿病の患者を対象とする、ルチン摂取の治療効果を検証した臨床研究です。ルチンとは、2個の糖が結合したケルセチンの類似物質です。この研究は、2021年の1月~10月にかけて、イランの病院にて、無作為化・二重盲検・プラセボ対照で行われました。

被験者をランダムに2群に分けました(無作為化)。片方の25名は介入群として、ルチン500 mgを含むカプセルを1日2回摂取しました。もう片方の25名は、ルチンを含まないカプセルを1日2回摂取して対照群としました(プラセボ対照)。3か月の摂取期間は勿論、全てのデータ解析が完了するまでは、どちらの群に属するか、患者さんにも医療従事者にも一切知らせません(二重盲検)。また、摂取するカプセルの見た目を統一して、ルチンが入っているか判断できないように仕組まれています。

糖尿病のメインとなる指標の空腹時血糖値ですが、ルチン介入群は摂取開始前の190.72±54.88 mg/dLが摂取開始後には150.68±36.81 mg/dLになり、顕著な低減効果が見られました。一方、対照群は181.28±58.80 mg/dLと183.40±55.80 mg/dLであり、摂取前後で変化がありません。ヘモグロビンに糖が結合した糖化産物も、糖尿病には重要な指標です。介入群が開始前の9.38±1.24%が開始後には8.34±1.55%に低下して改善効果を示した一方で、対照群は8.89±1.05%と8.92±1.00%で変化を認めませんでした。また、インスリンに関連する、血中インスリン濃度・HOMA-IR (インスリン抵抗性の指標)・QUICKI (インスリン感受性)も、ルチン介入群では顕著に改善されましたが、対照群は変化がありませんでした。

糖尿病では、脂質代謝も悪化します。健康診断の血液検査でおなじみの総コレステロール・LDL (悪玉コレステロール)・HDL (善玉コレステロール)・中性脂肪 (P=0.02)・動脈硬化指数も、モニタの対象にしています。II型糖尿病の患者だけに、摂取前は異常値でした。これらの脂質代謝に関連する検査項目は全て、ルチン介入群で顕著に改善され、対照群は変化なしでした。

この通り、ルチンは非常に優れたII型糖尿病の改善効果を示しました。しかし、毎日ルチン1 gを食べる必要があります。蕎麦100 g中には通常30 mgのルチンが含まれていますが、約3.3 kgの蕎麦を食べてようやく、ルチン1 gを摂れることになります。

キーワード: ルチン、II型糖尿病、臨床研究、無作為化、二重盲検、プラセボ対照