ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

フッ素塗布の効果は、ケルセチンとヘキサメタリン酸ナトリウムが増強する

出典: Archives of Oral Biology 2022, 143, 105541

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0003996922001984

著者: Letícia Cabrera Capalbo, Alberto Carlos Botazzo Delbem, Renan Dal-Fabbro, Kelly Karina Inácio, Rodrigo Cardoso de Oliveira, Juliano Pelim Pessan

 

概要: 歯科医院には、フッ素塗布という処置があります。歯を構成するヒドロキシアパタイトという成分にフッ素が入ると、虫歯菌が出す酸で溶けにくくなります。すなわち、フッ素塗布は虫歯になりにくい歯質にする目的で行います。また、なりかけの初期段階の虫歯を元に戻す効用も期待できます。今回の研究では、フッ素塗布の効果を更に増強する方法が検討され、ケルセチンとヘキサメタリン酸ナトリウムを追加するベスト条件が導かれました。

牛の歯から採取した象牙質を、以下の5群に分けました。1) 処置なし、2) 0.24%フッ化カリウムで処置、3) 0.24%フッ化カリウムと0.33%ケルセチンで処置、4) 0.24%フッ化カリウムと1.0%ヘキサメタリン酸ナトリウムで処置、5) 0.24%フッ化カリウム、0.33%ケルセチン、1.0%ヘキサメタリン酸ナトリウムで処置。0.24%フッ化カリウムは、象牙質をフッ素塗布と同様の条件に置くための操作です。また、ケルセチンとヘキサメタリン酸ナトリウムは、追加成分としての有効性を検証するために採択されました。

それぞれの処置を行った後、酸性条件に晒して、虫歯菌が歯を溶かすシミュレーションしました。処置と酸性条件を数回繰り返して、象牙質のすり減りを調べました。すり減りは酸性条件で溶けだした分ですので、すり減りが小さい程、虫歯になりにくいことを意味します。1)の16 μmに対して2)では4.0 μmでしたので、フッ素塗布の効果を反映しています。3)は3.5 μmで、ケルセチンの添加がやや改良したことを示しました。4)は5.0 μmで、ヘキサメタリン酸ナトリウムの添加は、反って逆効果となりました。面白いことに、5)では2.5 μmのすり減りで、3種の組合せが最適でした。

すり減りの評価だけでなく、試料に力を加えた際の強度も調べました。ここでも同様の傾向が見られました。表面から5~30 μmの浅い領域における強度は、1) >> 4) > 2) > 3) > 5)の順番となりました。表面から30~70 μmの深い領域では、3)~5)に差は殆どありませんでしたが、2)よりは強く、フッ化カリウムの単独処置に比べれば有効性が向上しています。

従って、ケルセチンとヘキサメタリン酸ナトリウムとを成分として追加すると、フッ素塗布の効果の増強が期待できます。

キーワード: フッ素塗布、フッ化カリウム、ケルセチン、ヘキサメタリン酸ナトリウム、象牙質、酸性条件