ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

アスピリンの妊娠高血圧腎症の改善効果は、ケルセチンが増強する

出典: Drugs in R&D 2022, 22, 271–279

https://link.springer.com/article/10.1007/s40268-022-00402-6

著者: Shuangyan Yang, Junfeng Zhang, Dan Chen, Jie Ding, Yanhong Zhang, Lili Song

 

概要: 妊娠20週以降に高血圧を発症すると、妊娠高血圧と呼ばれます。さらに蛋白尿を伴うと、妊娠高血圧腎症となります。妊娠高血圧腎症の原因は分かっておらず、入院して安静にする対処法しかないのが現状です。重症化すると母子ともに悪影響が懸念されるため、根本的な治療法の確立が望まれています。アスピリンが妊娠高血圧腎症の症状を軽減することは、既に知られています。今回の研究では、ケルセチンを組合せると、アスピリンの効果を増強することが示されました。

妊娠したラットに、リポ多糖という細菌由来の毒素を注射すると、血圧も尿中の蛋白質も上昇しました。収縮期血圧(いわゆる上の血圧)は、注射前が100 mmHgだったところ、注射後には130 mmHgを示しました。また、尿中の蛋白質は、700 mg/Lが1100 mg/Lに上昇して、妊娠高血圧腎症の状態を呈しました。妊娠高血圧腎症の症状が確認できたので、次に以下の4通りの処置を行いました。1) 何もしない、2) ケルセチンのみ投与、3) アスピリンのみ投与、4) ケルセチンとアスピリンを両方投与。薬物の投与期間は、12日間に設定しました。

12日後、1)の血圧はさらに上昇していて140 mmHgでした。2)と3)には効果を認め、125および120 mmHgと正常値に近づきました。4)は105 mmHgにまで下がり、ほぼ元に戻りました。

蛋白尿にも、似たような傾向を認めました。1)では悪化して1300 mg/Lに上昇しました。2)が950 mg/L、3)が1000 mg/Lとそれぞれ改善しましたが、4)では850 mg/Lと最大の効果が示され、ここでも正常近くまで回復しています。

次に、おなかの赤ちゃんへの影響を検証しました。正常ラットの赤ちゃんの体長が4.0~4.8 cmに対して、1)では12日後に2.8~3.8 cmとなり、大幅に成長が遅れています。投与による効果は、2)が3.1~4.0 cm、3)が3.2~4.0 cm、4)が3.5~4.5 cmでした。血圧や蛋白尿と同様に、赤ちゃんの成長にも、組合せが妊娠高血圧腎症の悪影響を改善しました。

以上、アスピリンとケルセチンはラットの妊娠高血圧腎症を同程度に軽減しましたが、両者の組合せは更に良好な結果となりました。

キーワード: 妊娠高血圧腎症、アスピリン、ケルセチン、ラット、血圧、蛋白尿