ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

フコイダンが発揮する抗アレルギー効果は、ケルセチンが増強する

出典: International Journal of Molecular Sciences 2022, 23, 12163

https://www.mdpi.com/1422-0067/23/20/12163

著者: Masashi Mizuno, Asuka Fujioka, Shiho Bitani, Ken-ichiro Minato, Hiroyuki Sakakibara

 

概要: フコイダンとは、昆布に多く含まれる食物繊維です。マウスにアレルギー物質を注射すると、注射前は5 μmだった耳の厚みが70 μmにまで腫れ上がりました。しかし、予め200 μgのフコイダンを飲ませておくと、アレルギー物質の注射にもかかわらず、18 μmに留まりました。これこそ抗アレルギー効果ですが、フコイダンを200 μgを摂るには、乾燥昆布が12 g必要になります。食べるために煮れば、大皿に山盛りの昆布となり、とても現実的ではありません。今回の研究では、フコイダンの抗アレルギー効果を増強する物質を野菜から探し、摂る昆布の量を減らす目的で行われました。

飲ませるフコイダンが100 μgだと、注射後の耳の厚みが55 μmで不十分な効果でした。各種野菜の抽出物とフコイダンが100 μgとを同時に飲ませて、55 μmより薄く出来ないか検討しました。その結果、効果にあった野菜は玉ねぎ・長ねぎ・オクラ・ブロッコリーでした。逆に効果のなかった野菜は、ピーマン・生姜・大根でした。これら野菜の構成成分を比較した結果、有効成分はケルセチンと、その類似物質であるケンフェロールであろうと見当がつきました。

そこで一歩先に進めて、ケルセチンとケンフェロールの効果を検証しました。まずケルセチン単独の効果を調べるべく、ケルセチン100 μgを飲ませて実験しましたが、注射後の耳の厚みは55 μmで、フコイダン100 μgの時と変わりませんでした。また、ケンフェロール単独でも同じ結果となり、効果は不十分でした。ところが、フコイダン100 μgとケルセチン100 μgとを同時に飲ませると、20 μmとなり、フコイダン200 μg単独時とほぼ同等の抗アレルギー効果が得られました。フコイダン100 μgとケンフェロール100 μgの組合せでは、38 μmであり、中程度の効果となりました。

驚くことに、フコイダン・ケルセチン・ケンフェロールの3成分の組合せが、最強の効果を与えました。すなわち、フコイダン100 μg・ケルセチン50 μg・ケンフェロール50 μgの組合せを飲ませた際の注射後の耳の厚みが5 μmで、何と注射前の厚みに戻りました。

ケルセチン・ケンフェロールともに、単独では効果が示されなかったため、フコイダンが持つ抗アレルギー作用の増強という位置付けになります。アレルギー症状の際には、フコイダンを多く含む昆布、ケルセチンを多く含む玉ねぎ、ケンフェロール多く含む長ねぎを同時に食べては如何でしょうか?

キーワード: フコイダン、アレルギー、マウス、耳、ケルセチン、ケンフェロール