ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

アテローム性動脈硬化症にケルセチンが効く仕組み

出典: Redox Biology 2022, 57, 102511

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S221323172200283X

著者: Xing Luo, Xiuzhu Weng, Xiaoyi Bao, Xiaoxuan Bai, Ying Lv, Shan Zhang, Yuwu Chen, Chen Zhao, Ming Zeng, Jianxin Huang, Biyi Xu, Thomas Johnson, Stephen J. White, Ji Li, Haibo Jia, Bo Yu

 

概要: アテローム性動脈硬化症とは、動脈の壁に脂肪が溜まって血管を詰まらせる症状です。血管の詰まりが進行すると、脳梗塞や心筋梗塞を招いて最悪で死に至る場合もあるので、早い段階での治療が必要です。今回の研究では、ケルセチンを摂取するとアテローム性動脈硬化症の進行を抑制することが、マウスを用いる実験で示されました。

脂肪代謝を調節するApoEという遺伝子が欠損したマウスに、脂肪分の多い餌を16週間与え続けて、アテローム性動脈硬化症を誘発しました。いわば、遺伝的に太りやすい人が、脂肪分の多い食生活を続けて生活習慣病やメタボリックシンドロームになるのと全く一緒です。その結果、動脈の壁の総面積の内、プラークと呼ばれる突起が40%を占めました。このプラークこそが、血管を詰まらせるアテローム性動脈硬化症の本質です。ApoEが欠損したマウスでも通常の餌を与えた群のプラーク領域は3~5%程度ですので、16週間の高脂肪餌がいかにアテローム性動脈硬化症を進行させたか、よく分かります。一方、脂肪分の多い餌に0.1%のケルセチンを混ぜた場合、16週間後のプラーク領域は18%に抑えられ、アテローム性動脈硬化症の進行に歯止めがかかりました。

ケルセチンの効果として、血中の中性脂肪と悪玉コレステロールを減少し、善玉コレステロールの増加を認めました。人間でいう健康診断の結果が良くなったのと同じです。

血管で何が起きたのか、詳しく調べました。その結果、高脂肪餌はマクロファージ(白血球の一種)を自然死させる蛋白質を多く血管に発現しましたが、ケルセチンはこの蛋白質の発現を抑制しました。マクロファージの自然死とは、先ほどのプラークと密接に関連します。プラークに含まれる成分は大きく分けて2つあり、悪玉コレステロールとマクロファージの死骸です。実験データは、ケルセチンが悪玉コレステロールの上昇を抑え、マクロファージの自然死を阻害したことを示しています。この事実は、プラークを構成する成分を減らし、言い換えればアテローム性動脈硬化症の進行を抑えたことを意味します。

脂肪分の多い食生活の方は、アテローム性動脈硬化症を予防するためにも、ケルセチンを豊富に含む玉ねぎやリンゴを多く摂られることをお勧めします。

キーワード: ケルセチン、アテローム性動脈硬化症、プラーク、マクロファージ、細胞死