イソケルセチンは非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)を予防する
出典: Journal of Agricultural and Food Chemistry 2022, 70, 14732–14743
https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/acs.jafc.2c06212
著者: Zunji Shi, Ce Zhang, Hehua Lei, Chuan Chen, Zheng Cao, Yuchen Song, Gui Chen, Fang Wu, Jinlin Zhou, Yujing Lu, Limin Zhang
概要: 非アルコール性脂肪肝疾患(以下、NAFLD)とは、文字通り、お酒が原因でない脂肪肝の総称です。過度の飲酒は肝臓に脂肪がたまる主原因ですが、運動不足・肉への偏食・不規則な生活も原因になります。いわば典型的な生活習慣病であり、肥満・糖尿病・高血圧・脂質異常症と併発することが多いのが、NAFLDの特徴です。今回の研究では、ケルセチンに糖が1個結合したイソケルセチンがNAFLDを予防することが、マウスを用いる実験で実証されました。
マウスを3つのグループに分け、違う餌で15週間飼育しました。1) 通常の餌、2) 脂肪分60%の高脂肪食、3) 同じ高脂肪食にイソケルセチンを0.5%添加、3群に区分します。
15週間後のマウスの体重は、1)が30 g、2)が51 gでした。高脂肪食のマウスは、通常の餌と比べて大幅に太り、人間で脂肪分の多い食生活が肥満を招くのと一緒です。しかし、3)では丁度中間の42 gでした。高脂肪食なので体重は増加しますが、イソケルセチンを添加すれば、最小限に抑えられたことが分かります。また、肝臓の重さはNAFLD の進行を示す指標ですが、1.2 g、2.4 g、1.7 gの値でした。この結果も、高脂肪食がNAFLDを悪化させること、イソケルセチンが良好な予防効果を示したことを意味します。
健康診断では必ず血液検査を行い、ALTやASTと言った酵素の量を調べます。本来ALTやASTは肝臓に存在して肝臓としての働きをする筈ですが、組織が破壊されると血液に流れ出して、血中濃度が上昇します。ゆえに、血液を調べると肝機能が分かるのですが、NAFLDにかかると肝機能が低下します。今回の実験でも、血中のALT値は1)の30 U/Lに対して、高脂肪食の2)では180 U/Lに上昇し、肝機能の低下は顕著でした。これが3)だと60 U/Lに抑えられ、ここでもイソケルセチンの明確な予防効果が示されました。なお、ASTでも同様の傾向が見られました。
高脂肪食の悪影響は、肝臓だけにとどまりません。実験では、腸内細菌叢(生息する細菌類の分布)も調べました。その結果、高脂肪食の2)では、善玉菌に分類されるビフィズス菌と乳酸菌が極端に減りました。しかし、1)と3)はほぼ同等で、高脂肪食の影響は全くありませんでした。
イソケルセチンには及びませんが、ケルセチンにも優れた効果が見られました。脂肪分が多い食生活の方は、ケルセチンを多く含む玉ねぎやリンゴを食べて、NAFLDを予防しましょう。
キーワード: 非アルコール性脂肪肝疾患、マウス、イソケルセチン、肥満、肝機能、腸内細菌叢