過剰のカルニチンによる肝機能の低下は、ケルセチンが回復する
出典: Food & Function 2023, 14, 206-214
https://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2022/FO/D2FO01909D
著者: Li Zhang, Qiu Wu, Nan Wang, Liansheng Zhang, Xingbin Yang, Yan Zhao
概要: カルニチンは体内のほとんど全ての場所に存在し、従って、動物性食品には必ず含まれています。体内で脂肪が燃焼してエネルギーを産出する際に、カルニチンは脂肪を運搬する働きを担います。カルニチンの働きがあって初めて脂肪が栄養素として機能するため、カルニチンは第二の栄養素とも呼ばれます。しかし、カルニチンが分解すると肝毒性のあるTMAOという物質を発生するため、摂り過ぎは健康を害します。今回の研究では、カルニチンの過剰摂取が招いた肝機能の低下をケルセチンが改善したことが、マウスを用いる実験で実証されました。
40匹のマウスを8匹ずつ5つのグループに分けました。グループは、1) 比較対照、2) カルニチン、3) カルニチン+低用量ケルセチン、4) カルニチン+中用量ケルセチン、5) カルニチン+高用量ケルセチンに設定しました。2)~5)は、3%のカルニチンを含む飲み水を与え、1)はカルニチンを含まない飲み水で飼育します。3)~5)はケルセチンを1日1回飲ませますが、その量は150 mg/kg、300 mg/kg、450 mg/kgです。それぞれの条件で12週間飼育して、その後の変化を調べました。
12週間後に血液中のTMAO濃度は、1)が80 μg/Lで2)では230 μg/Lにまで上昇しており、カルニチンの影響を反映しました。3)~5)では190 μg/L、150 μg/L、130 μg/Lとなり、ケルセチンの用量に応じてTMAOを低減しました。
容易に予想できることですが、TMAOの上昇に伴って、肝機能が低下しました。健康診断では血中のALTやASTという酵素しますが、肝機能の指標です。両者とも2)では大幅に上昇しましたが、3)~5)で比例するように下がりました。特にASTは1)と3)がほぼ同等で、低用量のケルセチンで正常に戻り、それ以上の4)と5)では1)より下がった位です。
また、肝機能の低下に加えて、2)の肝組織には炎症が目立ちました。肝臓の切片を顕微鏡で観察すると、2)では炎症による損傷が顕著でした。TMAO や肝機能と同様に、炎症も5)4)3)の順に改善されました。さらに、炎症を誘発する因子であるサイトカインという物質の挙動も、TMAO・ALT・ASTと同等であり、ケルセチンの効果を物語っています。
以上の結果は、肉に偏った食生活の危険性を示唆しています。肉への偏食は、過剰のカルニチン摂取のリスクを秘めており、肝毒性のリスクと言えます。改善効果のデータは、ケルセチンを多く含む野菜や果物を食べること、すなわち栄養バランスの重要性を示しています。
キーワード: カルニチン、マウス、TMAO、ケルセチン、肝機能、炎症