フラボノールの摂取と、加齢による認知機能の低下との関連
出典: Neurology 2022, 99, e694-e702
https://n.neurology.org/content/early/2022/11/22/WNL.0000000000201541.abstract
著者: Thomas Monroe Holland, Puja Agarwal, Yamin Wang, Klodian Dhana, Sue E. Leurgans, Kyla Shea, Sarah L. Booth, Kumar Rajan, Julie A. Schneider, Lisa L. Barnes
概要: 今回の研究では、ケルセチンを含めたフラボノールの摂取と加齢に伴う認知機能の低下との関連を調査しました。1997年から継続する米国のラッシュ大学病院が行う、加齢による脳の変化と認知機能の関連について検討するプロジェクトの一環です。
認知症にかかっていない60~100歳の参加者961名に、普段の食生活に関するアンケートを行いました。これは食物摂取頻度質問票と呼ばれ、合計で114品に渡る食品が並んでおり、過去1年間で、食べた頻度を答えます。例えば卵なら、毎日食べる・週4~6回食べる・週2~3回食べる・ほとんど食べない・全く食べないの選択肢から一つ選び、1回あたりの量としては卵1個以下・1個・1個以上から選んで回答します。摂取頻度と1回あたりの量から、年間の摂取量が推定できます。
一方、認知機能の検査も別途に実施します。時間や場所など個人的な事象に関する「エピソード記憶」、知識に直結する「意味記憶」、視覚や聴覚を処理する「知覚速度」、物を見せて何があったか問う一時的な記憶の「作業記憶」、人や物を見て認識する「視空間機能」の5項目の認知機能を評価します。面談形式で行われ、「今朝起きた時刻は」という質問はエピソード記憶に相当し、「‘ら’で始まる言葉を5つ挙げて下さい」という質問は知覚速度に相当します。この検査は毎年行われるため、加齢による低下の有無を知ることができます。
参加者961名を、フラボノール摂取量の小さい順に並び替えて5等分して、5つのグループに分けました。摂取量の最も少ないグループ1(1日当たりの平均摂取量が5.26 mg)は合計スコアの低下が最も大きく、以下2~5になるに従って低下は少なくなり、グループ5(同15.18 mg)では最小の低下を示しました。従って、フラボノールを多く摂取すると、加齢による認知機能全体の低下を遅らせます。
同様にして、個々の認知機能に関しても、フラボノールの摂取量との関連を調べました。その結果、視空間機能を除く4項目で、全体スコアと同様に、グループ1から5になるに従いスコアの低下が少なくなりました。視空間機能は、フラボノールの摂取量との関連がごく僅かという結果でした。
さらに、フラボノールの各成分も細かく調べました。認知機能全体の低下と関連していた成分はケルセチンとケンフェロールで、イソラムネチンとミリセチンは関連していないという結果でした。
キーワード: ケルセチン、フラボノール、認知機能、食物摂取頻度質問票