ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ルチンは尿酸の生成を抑制し、抗炎症作用を発揮してウズラの痛風を改善する

出典: Biomedicine & Pharmacotherapy 2023, 158, 114175

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0753332222015645

著者: Hao Wu, Yu Wang, Jingjian Huang, Yaolei Li, Zhijian Lin, Bing Zhang

 

概要: 痛風は、尿酸という物質が体内にたまり、結晶となって足の親指の付根を中心に炎症と腫れを起こします。発作時の痛みは非常に激しく、風が吹くだけでも痛いから痛風と呼ばれる説もある位です。1週間ほどで痛風の発作はなくなりますが、放置すると慢性化します。慢性化すると、足首や膝の関節まで腫れ、次の発作が起こるまでの間隔も短くなるので、早期の治療が必要です。今回の研究では、ケルセチンに糖が結合したルチンが痛風の症状を改善することを、ウズラを用いた動物実験で示されました。しかも、痛風の原因物質である尿酸の生成を抑制し、炎症の根本原因を改善するという、痛風の治療には理想的な性質をルチンが有していることが明らかになりました。

プリン体と呼ばれる物質が酸化されると、尿酸を生成します。尿酸は更に酸化されてアラントインという物質に変わりますが、ウズラには尿酸を酸化する酵素がありません。このため、プリン体を多く含む餌でウズラを飼育すると、食べたプリン体は全て尿酸に変わり、それ以上の変化がありません。従って、体内に尿酸が蓄積され、痛風の症状を呈します。実験動物にウズラを選んだ理由は、容易かつ短期間で痛風の状態を再現できる点にあります。

実際、高プリン食を30日間継続したウズラは、通常の餌で飼育したウズラと比べて、足の腫れが目立ちました。痛風の症状が確認できたので、ルチンの投与を開始しました。通常の餌のグループは、通常食を継続して、正常の状態を保ちます。一方、痛風になったウズラは、2群に分け、片方は高プリン食を継続します。もう片方は、高プリン食を与えますが、ルチン300 mg/kgを毎日飲ませます。

40日後の足の腫れは、正常群が4.5%、ルチン群が6.5%、非投与群が10%でした。痛風の原因物質である尿酸は、血中の濃度として、正常群が190 μmol/L、ルチン群が280 μmol/L、非投与群が580 μmol/Lを示しました。血液1L当たりのプリン体を尿酸に変換する酵素の量は、正常群が3.8単位、ルチン群が3.9単位、非投与群が6.6単位となりました。このデータは、プリン体を尿酸に変換する過程をルチンが阻害していることを、意味します。従って、高プリン食を継続していても、ルチンを同時に摂っているので、尿酸の産出が少なくなり、足の腫れも改善されました。

次に、足の関節にある滑膜という組織を調べました。炎症の大元となるNLRP3インフラマソームという蛋白質の集団の相対的な比率は、正常群が4.0、ルチン群が5.6、非投与群が8.2でした。ルチンは、関節にてNLRP3インフラマソームの発現を減少して、炎症の大元を抑制しました。

プリン体を多く含むビールやレバーが好きな方は、ルチンを多く含むそば・野菜・果物を食べましょう。ルチンが尿酸の生成を抑え、抗炎症作用を発揮すれば、痛風の効果的な予防となります。

キーワード: 痛風、ウズラ、プリン体、尿酸、炎症、NLRP3インフラマソーム、ルチン