アレルギー性鼻炎にケルセチンが効く仕組み
出典: Autoimmunity 2023, 56, 2189133
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/08916934.2023.2189133
著者: Xia Ke, Ziqi Chen, Xiaoqiang Wang, Houyong Kang, Suling Hong
概要: 本格的な花粉症の季節になりました。ケルセチンが花粉症に効くことはよく知られていますが(https://health.alps-pharm.co.jp/topics/2921/)、今回の研究ではその仕組みが解明されました。
マウスに卵アレルギーの原因物質を注射すると、アレルギー鼻炎の症状を呈しました。実際、15分間で鼻をこする回数が3回だったのが14回に増え、同じく15分間当たりのくしゃみ数は0回から52回になりました。ケルセチンを20, 35, 50 mg/kgの用量で2週間飲ませると、鼻こすりは12, 8, 5回、くしゃみは41, 38, 19回に、それぞれ段階的に減少しました。従って、ケルセチンが効く/効かないの境界は20 mg/kgと35 mg/kgにあることが分かりました。
次に、マウスの体内で起きた変化を調べました。アレルギー鼻炎とは、花粉やハウスダストなどの異物を排除するための体の反応です。くしゃみは花粉を鼻やのどから吹き飛ばすため、鼻詰まりは花粉を鼻に入れないため、涙は目の花粉を洗い流すための体の反応と言えます。これらの度が過ぎると不快な症状を呈しますが、ヘルパーT2細胞(Th2)が過剰に活性化した結果です。ケルセチンがアレルギー鼻炎に効くのは、この活性化したTh2を鎮めることが知られています。今回の研究でも、Th2の抑制を確認しましたが(データは割愛します)、他の要因が新たに発見されました。
免疫の効きすぎ(花粉を排除する働きが過ぎでくしゃみ・鼻詰まり・涙が止まらなくなる状態が代表例です)にブレーキをかける、制御性T細胞があります。マウスの血液を詳細に調べたところ、アレルギー鼻炎になると制御性T細胞の働きが弱くなり、ケルセチンは制御性T細胞を活性化することが分かりました。制御性T細胞が働くように仕向けるインターロイキン-10という蛋白質がありますが、アレルギー鼻炎になると、24 pg/mLから10 pg/mLまで半分以下に減少しました。これがケルセチン50 mg/kg群では、正常近くの22 pg/mLまで回復しています。
先程述べたヘルパーT2細胞(Th2)の仲間に、ヘルパーT17細胞(Th17)があります。Th2と同様にTh17も、アレルギー鼻炎になると活性化しますが、ケルセチンが抑制することが分かりました。Th17が働く時に放出される蛋白質を測定したところ、正常の14 pg/mLに対して、アレルギー鼻炎で21 pg/mLに上昇し、ケルセチン50 mg/kg群で15 pg/mLという結果でした。ここでもケルセチンによる正常化を認めました。
今回、新たに解明されたケルセチンが効く仕組みとして、アレルギー鼻炎で不活性化した制御性T細胞を回復し、過剰に活性化したヘルパーT17細胞は抑制する点が挙げられます。すなわち、ケルセチンは、制御性T細胞とヘルパーT17細胞のバランスを整えました。
キーワード: アレルギー鼻炎、花粉症、ケルセチン、制御性T細胞、ヘルパーT17細胞