ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは、新型コロナウィルス肺炎の補完的治療に貢献する

出典: Frontiers in Pharmacology 2023, 13, 1096853

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2022.1096853/full

著者: Francesco Di Pierro, Amjad Khan, Somia Iqtadar, Sami Ullah Mumtaz, Muhammad Nabeel Akbar Chaudhry, Alexander Bertuccioli, Giuseppe Derosa, Pamela Maffioli, Stefano Togni, Antonella Riva, Pietro Allegrini, Martino Recchia, Nicola Zerbinati

 

概要: 100名の新型コロナウィルス肺炎(COVID-19)患者を対象とする、通常の治療にケルセチンの摂取を追加した際の、補完的な効果を検証した臨床研究です。パキスタンのキングエドワード医科大学病院で行われました。

47.6±15.7歳の軽~中度のCOVID-19患者100名を、ランダムに2群に分けました。片方の50名は通常の治療を行いました。すなわち、解熱剤と抗生物質の投与を行い、比較対照群としました。一方の50名には、通常の治療に加えて、ケルセチンの摂取が追加されます。ケルセチンの摂取量は、1週目には500 mgを1日3回、2週目には1日2回に減らしました。なお、イタリアのIndena社が開発したケルセチンフィトソームという、ケルセチンがリン脂質と複合体を形成したサプリ製剤が用いられました。

治療期間は2週間ですが、効果の違いは早くも1週間後に現れました。治療開始後1週間に行ったPCR検査では、ケルセチン追加群の50名中34名がコロナウィルス陰性となりました。一方、通常の治療のみの対照群で陰性になった被験者は12名で、3倍近くの差がつきました。2週間経過して試験期間が終了すると、ケルセチン追加群・対照群ともにほぼ全員が陰性となり、この時点での差はもはやありません。COVID-19に特有の症状である、発熱・咳・筋肉痛・のどの痛み・息苦しさ・頭痛・倦怠感の回復も、ケルセチン群の方が有意でした。1週間後の時点で自覚症状の全てが治まった被験者数はケルセチン群が26名、対照群が12名で、2倍以上の差がつきました。以上の結果は、ケルセチンの摂取を追加することで、通常の治療よりもCOVID-19の回復が早まったことを意味します。従って、ケルセチンによる補完治療の効果が、ヒトで実証されたことになります。

1週間後には血液検査も行い、乳酸脱水素酵素の量を調べました。乳酸脱水素酵素とは各臓器に存在して、糖質をエネルギーに変える働きをします。しかし、臓器に炎症が起こると血液に流出するため、血中の乳酸脱水素酵素が上昇して炎症の指標となります。ケルセチン追加群は1週間で乳酸脱水素酵素が37%低下しましたが、対照群では12%に留まりました。ケルセチンはCOVID-19の回復を促進しただけでなく、炎症の軽減にも効果を示しました。

ケルセチンの抗ウィルス作用と抗炎症作用は、数多くの研究成果がありよく知られていますが、その潜在能力をフルに発揮したのが、COVID-19の補完治療だったと言えましょう。

キーワード: ケルセチン、COVID-19、補完治療、PCR検査、自覚症状、乳酸脱水素酵素、臨床研究