ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンの摂取と、フレイル発症との関連

出典: The American Journal of Clinical Nutrition 2023, 118, 27-33

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0002916523468426

著者: Steven Oei, Courtney L. Millar, Thuy Nga Nguyen, Kenneth J. Mukamal, Douglas P. Kiel, Lewis A. Lipsitz, Marian T. Hannan, Shivani Sahni

 

概要: フレイルとは、高齢者が健康な状態と要介護状態の中間にあることを意味します。高齢者の10~15%がフレイル状態にあると推定され、転落・骨折・寝たきり・長期入院の危険性が常にあるのがフレイルです。従って、フレイル対策は高齢者時代の重要な課題ですが、食生活でフレイルを予防するに越したことはありません。今回の研究では、ケルセチンの摂取がフレイル発症のリスクを低下することを、統計的な手法で示されました。

フラミンガム心臓研究という、1948年から米国マサチューセッツ州で継続している心臓病を中心とする追跡調査の一環で行われました。1998-2001年の時点でフレイルでない被験者1701名を追跡し、2011-2014年に13.2%の224名がフレイルを発症しました。なお、フレイルの診断基準は、1) 意図しない体重減少が1年間で4.5 kg以上、2) BMI(kgで表した体重を、mで表した身長の2乗で割った数値)が18.5 kg/m2以下、3) 握力の低下、4) 歩行速度の低下、5) 身体活動指数(1日の総エネルギー消費量を1日の基礎代謝量で割った数値)の低下、の5項目が一つでも当てはまる時です。

ケルセチンの摂取量は、普段の食生活に関するアンケートを基に取得しました。これは食物摂取頻度質問票と呼ばれ、合計で114品に渡る食品が並んでおり、過去1年間で、食べた頻度を答えます。例えば卵なら、毎日食べる・週4~6回食べる・週2~3回食べる・ほとんど食べない・全く食べないの選択肢から一つ選び、1回あたりの量としては卵1個以下・1個・1個以上から選んで回答します。摂取頻度と1日あたりの量から、1日の平均摂取量が計算できます。

データを統計的に処理して、ケルセチンの1日摂取量が10 mg以下のグループと10 mg以上とで、フレイル発症の確率を比較しました。前者を1とした場合、後者は0.65と算出されました。この数値はオッズ比と呼ばれ、ある事象(ここではフレイルの発症です)が起こる確率を2つのグループ間で比較する際に汎用されます。従ってオッズ比0.65とは、ケルセチンを1日10 mg以上摂取すると、フレイルの発症確率が10 mg以下の0.65倍になったことを意味します。言い換えれば、フレイル発症のリスクが35%低減したとも解釈できます。また、オッズ比に必ずセットで付く95%信頼区間は、0.48~0.88と求められました。95%信頼区間とは、オッズ比が95%の確率で存在する下限が0.48で、上限が0.88で、その代表値が0.65であるという意味です。一般に、下限の上限と比が0.5以上ならオッズ比の精度は高く、0.25以下なら精度は低く、0.25~0.5なら中間と言われています。

今回は、0.48/0.88=0.55ゆえ、精度の高いオッズ比でした。従って、ケルセチンの摂取がフレイル発症を35%低減したという結論は、精度の高いデータに基づきます。

キーワード: フレイル、ケルセチン、食物摂取頻度質問票、オッズ比、95%信頼区間