タキシフォリンは軽度認知障害を改善する
出典: Journal of Alzheimer’s Disease 2023, 93, 743–754
https://content.iospress.com/articles/journal-of-alzheimers-disease/jad221293
著者: Yorito Hattori, Satoshi Saito, Yuriko Nakaoku, Soshiro Ogata, Masashi Hattori, Mio Nakatsuji, Kunihiro Nishimura, Masafumi Ihara
概要: 多くの人が間違いますが、「物忘れ」と「認知症」とは別です。体力や内臓機能と同様に、記憶力が加齢に伴って低下するのが物忘れです。従って、物忘れは誰にでもある老化現象の一部ですので、気にする必要は全くありません。対して認知症は、記憶力や判断力の障害により通常の社会生活が送れない状態で、医学的な対策が必要です。しかし、物忘れと認知症とを線引きする基準はなく、中間的なグレーゾーンが存在し、これを軽度認知障害と呼びます。今回の研究では、タキシフォリンというケルセチンを還元した物質による、軽度認知障害の改善効果がヒトで実証されました。
モントリオール認知尺度という、認知機能の検査方法があります。ランダムに並んだひらがなと数字を、あ→1→い→2→う→3→え の様に順に線で結ぶ「視空間認知」、動物の絵を見せて何であるかを答える「命名」、‘ら’で始まる言葉を1分間で出来るだけ多く挙げるよう求める「言語」、読み上げた単語が何があったか問う「記憶」、その日の日付や曜日を答える「見当識」など、全部で11項目の認知機能を評価します。面談形式で行われ、30点満点で26点以上が正常とされ、25点以下であれば軽度認知障害と診断されます。
18.3~23.5点(平均: 21.0点)で軽度認知障害と診断された、73~81歳の被験者16名を対象に、試験が行われました。180±100日後に2度目の診断を実施し、この翌日からタキシフォリンの摂取(300 mg/day)を開始しました。180±100日の摂取期間を設け、終了後に3度目の診断を行いました。1度目と2度目との間の180±100日間は、タキシフォリンの非摂取期間となります。また、2度目と3度目との間の180±100日間は、摂取期間とみなせます。従って、1度目と2度目との点数の変化を、2度目から3度目にかけての変化と比較することで、タキシフォリンの効果が分かります。
結果は、1度目と2度目にかけて点数が平均で1点下がりました。この結果は、認知機能が年齢とともに低下することを示す、貴重なデータです。一方、2度目から3度目には、プラス1点の変化がありました。両方を比較すると2点の差になります。各検査項目の中で特に向上したのは、視空間認知と言語の2項目でした。得られたデータを統計的に処理すると、2度目から3度目にかけての変化の方が、96.6%の確率で優れていました。従って、タキシフォリンには認知機能を改善する効果があると、結論できました。
冒頭で、軽度認知障害は物忘れと認知症との中間と述べました。軽度認知障害は認知症に至っていないことは事実ですが、10~15%が1年以内に認知症に移行すると言われています。ゆえに、タキシフォリンは認知症を発症させない強い味方と言えましょう。
キーワード: 軽度認知障害、タキシフォリン、モントリオール認知尺度、認知機能