ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは認知障害における感情を改善する

出典: Heliyon 2023, 9, e18401

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405844023056098

著者: Yuichi Hayashi, Fuminori Hyodo, Tana, Kiyomi Nakagawa, Takuma Ishihara, Masayuki Matsuo, Takayoshi Shimohata, Jun Nishihira, Masuko Kobori, Toshiyuki Nakagawa

 

概要: 認知症は、うつ病をしばしば併発します。うつ病が認知症を悪化したり、認知症がうつ病の症状を重症化させるなど、悪循環を招くケースが見られます。反対に、うつ病で入院時の検査で認知症の疑いを認めながら、うつ病が治って退院時の再検査で認知症が否定された事例も知られています。今回の研究では、初期の認知症の患者さんがケルセチンを摂取すると、感情を改善して前向きな気分を向上する効果が実証されました。

認知機能の検査で認知症と診断された13名と、正常と認知症との境界領域である軽度認知障害と診断された6名の、合計して19名の被験者を対象に行われました。ランダムに2群に分け、片方の10名は、北海道産でケルセチンを豊富に含む「さらさらゴールド」という玉ねぎを摂取しました。さらさらゴールドの粉末を1日当りに11 g摂取しますが、この中にはケルセチンが 50 mg含まれています。もう一方の9名は、ケルセチンを含まないタマネギ粉末を摂取して、比較対照群としました。

12週間の摂取期間が終了した後、認知機能の検査の一環として、文章を書いて貰いました。どんな文章でも良いのですが、検査担当者が例文を与えてはいけない条件で行います。意味のある文章なら正解ですが、単語を並べただけでは誤答と見なします。しかし、状態を表現する四字熟語であれば正答とします。正答を1点、誤答を0点として、摂取期間の前後における点数の変化を比較しました。その結果、ケルセチン摂取群は対照群と比較して、0.031~0.769点ほど向上しました。得られたデータを統計的に処理すると、95.7%の確率で優れていることが分かりました。

次に、書かれた文章の中身を精査しました。その結果、状態を表す形容詞や形容動詞を書く頻度に違いが見られ、ケルセチン摂取群に増える傾向がありました。ケルセチン摂取群の検査で書かれた形容詞は、摂取前の平均4回に対して、摂取後では14回に増えました。一方、対照群では2.5回と3.0回で変わりはありませんでした。上位に登場する形容詞や形容動詞を調べると、ケルセチン摂取群では「幸せだ」「明るい」「涼しい」「楽しい」「元気だ」「恥ずかしい」「暖かい」「良い」「嬉しい」「一生懸命だ」の順番で、比較的ポジティブな言葉が目立ちました。対して対照群では、「独りぼっちだ」「多い」「早い」「元気だ」が上位となっています。

以上の結果から、初期段階の認知症あるいは軽度認知障害において、ケルセチンの摂取は感情を良好に改善すると結論しました。認知症になると、生き生きとした積極的な気分は低下しがちですが、ケルセチンの摂取で維持・向上を図れることが期待できます。

キーワード: 認知症、軽度認知障害、うつ、ケルセチン、認知機能、文章、形容詞、形容動詞