ケルセチンが高尿酸血症に効く仕組み、ラクトバチルス菌との関係・前編
出典: Pharmacological Research 2023, 196, 106928
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1043661823002840
著者: Depeng Li, Meihong Zhang, A. La Teng Zhu La, Zhengtian Lyu, Xin Li, Yuqing Feng, Dan Liu, Yuming Guo, Yongfei Hu
概要: 尿酸とは、食物に含まれるプリン体という成分が肝臓で変化して生じる老廃物です。文字通り、尿酸は尿と一緒に排出される物質です。しかし、肝臓で過剰に尿酸を産出したり、排泄機能(特に腎臓)に異常が生じると、血液中の尿酸が上昇します。この状態が高尿酸血症です。体内に蓄積した尿酸は足の親指の付根を中心に炎症と腫れを起こし、痛風を発症します。風が吹いただけでも痛いと言われるほど、激しい痛みを伴う痛風の原因物質が尿酸です。今回の研究では、ケルセチンが高尿酸血症を軽減する仕組みが解明され、腸内細菌叢との関連が明らかになりました。
ニワトリに過剰のプリン体を49日間与え続けると、血中の尿酸濃度が150 μmol/Lから2倍の300 μmol/Lに上昇して、高尿酸血症のモデルとなりました。この時点からケルセチンを63日間投与すると尿酸濃度は180 μmol/Lにまで下がり、顕著な改善効果を認めました。また、キサンチンオキシダーゼというプリン体を尿酸に変換する酵素は、プリン体による高尿酸血症のモデルで異常に活性化していましたが、ケルセチンが正常に戻しました。従って、ケルセチンが尿酸の産出を抑制して、ニワトリの高尿酸血症を軽減したことが明確になりました。また、クレアチニンと尿素窒素という二つの物質も、本来は尿で排泄されますが、腎機能が低下すると血中に残ります。この二つも過剰のプリン体で血中濃度が上昇しましたが、同様にケルセチンが正常化しました。
次に、腸内細菌叢(生息する細菌類の分布)を調べたところ、ケルセチンは8種類の菌を大幅に増やしました。その中でも、ラクトバチルス属アビアリウスという菌が目立って増え、投与前に比べて1万倍になりました。面白いことに、この菌の存在量と血中の尿酸濃度との間には、負の相関関係がありました。すなわち、腸内にラクトバチルス属アビアリウスが増えると、血中の尿酸濃度が下がる傾向が明らかになりました。
ケルセチン処置したニワトリの腸からラクトバチルス属アビアリウスを分離し、CML180と名づけ、その性質を調べる実験を行いました。CML180を培養する際に、濃度を変えてケルセチンを添加してCML180の増殖への影響を調べました。まず、ケルセチン無添加で培養するよりも、添加時の方がCML180の増殖を促進しました。濃度の影響ですが、0~0.25%の範囲では濃度の上昇に応じて増殖速度が向上しましたが、0.5%の濃度では反って遅くなり0.125%と0.25%の中間値になりました。従って、最も効率良くCML180の増殖を促進するケルセチン濃度は、0.25%でした。
以上の結果、ケルセチン投与でラクトバチルス属アビアリウスの腸内の存在量が著しく増えた現象には、ケルセチンによる同菌の増殖促進作用が根底にありました。後編に続く
キーワード: 高尿酸血症、尿酸、ケルセチン、腸内細菌叢、ラクトバチルス属アビアリウス