ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンが高尿酸血症に効く仕組み、ラクトバチルス菌との関係・後編

出典: Pharmacological Research 2023, 196, 106928

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1043661823002840

著者: Depeng Li, Meihong Zhang, A. La Teng Zhu La, Zhengtian Lyu, Xin Li, Yuqing Feng, Dan Liu, Yuming Guo, Yongfei Hu

 

前編から続く

概要: ケルセチンによる増殖促進が明らかになった、ニワトリ由来のラクトバチルス属アビアリウスCML180に関する実験を進めました。続いて行われた実験ですが、CML180が血中の尿酸に対してどのような影響を及ぼすか、マウスを用いて検証しました。

前編の実験と同様に、マウスに過剰のプリン体を与えて、高尿酸血症を誘発しました。前編と違う点ですが、ケルセチンの代わりにCML180を投与して、その効果を検証しました。プリン体が上昇した血中の尿酸・クレアチニン・尿素窒素は全て、CML180の投与で低減しました。正常なマウスの尿酸濃度は170 μmol/Lでしたが、プリン体で240 μmol/Lまで上昇し、その後のCML180投与で180 μmol/Lにまで回復しました。CML180はまた、キサンチンオキシダーゼの働きも抑制して、プリン体の尿酸への変換を阻害しました。前編のニワトリの実験では、ラクトバチルス属アビアリウスの存在量と血中尿酸濃度とは負の相関関係があることが示されました。しかし、相関関係は因果関係までは説明できません。今回のマウスの実験でCML180の投与が尿酸の低下を示したので、ラクトバチルス属アビアリウスが増えた結果、尿酸値が低減したという因果関係を初めて実証しました。

肝臓におけるCML180の働きの詳細を知るために、NT5Eという蛋白質の発現状況を調べました。NT5Eは肝臓で尿酸が作られる時の上流に位置しますが、このNT5Eの働きがあって初めて尿酸が作られる重要な役割です。プリン体を投与する前のマウスにけるNT5Eの発現を1とした時の相対比率は、プリン体で2.7に増えましたが、CML180が1.2まで低減しました。従って、CML180による尿酸の低減の本質は、肝臓における尿酸産出の抑制にありました。

CML180は直接尿酸に作用して何らかの変化を起こすのか、という疑問が生じます。そこで、尿酸を添加してCML180を培養しました。時間が経過しても尿酸の濃度は一定で、尿酸はCML180で分解されず、直接の作用はないことが分かりました。次に、尿酸の代わりにプリンヌクレオシドというプリン体の一種を入れたところ、速やかに消失し、CML180による分解を示唆しました。尿酸が作られる前の段階でCML180がプリン体を分解すれば、尿酸が産出する余地を与えません。この事実は、先程示された肝臓における尿酸産出の抑制とも良好に一致しています。

これで全ての関係が明確になりました。ケルセチンの投与は、腸内のラクトバチルス属アビアリウスを増やします。同菌の働きは、肝臓における尿酸の産出抑制とプリン体の分解で、血中の尿酸濃度を低下します。結論として、ケルセチンは腸内細菌叢を介して高尿酸血症を軽減しました。

キーワード: 高尿酸血症、尿酸、CML180、NT5E、プリン体