ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンに2種の天然物を混合して前立腺癌に対抗する

出典: Biomolecules 2024, 14, 105

https://www.mdpi.com/2218-273X/14/1/105

著者: Qiongyu Hao, Susanne M. Henning, Clara E. Magyar, Jonathan Said, Jin Zhong, Matthew B. Rettig, Jaydutt V. Vadgama, Piwen Wang

 

概要: 前立腺は膀胱の下に位置するため、前立腺癌を発症しても膀胱や尿道の圧迫感がなく、自覚症状が殆どありません。従って、以前は早期発見が困難で死期に近づいてようやく発見されることの多い癌でしたが、現在ではPSA検査により容易に発見できるようになり、前立腺癌が死因となるケースは減少傾向にあります。PSAとは前立腺特異的抗原と訳され、文字通り前立腺のみに存在する物質ですが、前立腺癌が組織を破壊すると血液に流出します。血液中のPSAを測定することで、前立腺癌の進行具合が診断できます。今回の研究では、ケルセチンに他の天然物2種を組合せると、前立腺癌に対する効果が向上することが発見されました。他の2種とは、緑茶抽出物とゴボウに多く含まれるアルクチゲニンです。

WPE1-NA22というヒト前立腺癌細胞に、ケルセチン・EGCG(緑茶抽出物の主成分)・アルクチゲニンをそれぞれ単独で作用させると、弱くに増殖を抑制しました。前立腺癌に限らず癌細胞には無限に増殖する性質があります(ゆえに患者さんの癌組織が拡がります)が、癌に効く物質を加えると増殖が抑制されます。弱い抑制とは、何も加えない時と比べて増殖を75~80%に減少したことを意味します。ところが3種を組合せて前立腺癌細胞に作用すると、10%以下に増殖を抑制しました。単独では75~80%の弱い抑制効果ながら、組合せるだけで10%以下の強力な抑制効果を獲得しました。

次に、遺伝子操作して前立腺癌を自然発症するマウスを用いて、組合せの効果を検証する実験を行いました。マウスが3~16週齢の間に3種の組合せを投与しました。比較のために、ケルセチンと緑茶抽出物の2種の組合せ、アルクチゲニン単独の投与群に加え、何も投与しないグループも設けました。従って、4通りのグループ間の比較を行いました。投与期間が終了した16週齢に達した時、前立腺癌の進行を人間と同じように画像診断しました。何も投与しないと癌細胞は無限増殖するので、その時の腫瘍組織の大きさを100%としました。ケルセチンと緑茶抽出物の組合せ群の60%(抑制率は40%)およびアルクチゲニン単独群の40%(同60%)に対して、3種組合せ群では10%(同90%)となりました。組合せによる前立腺癌の増殖抑制効果の増強は、細胞レベルでも個体動物レベルでも検証されました。

ケルセチンは玉ねぎやリンゴに多く含まれるので、今回使用した天然物はいずれも食物由来です。ゴボウ・玉ねぎ・リンゴをふんだんに食べ、緑茶を飲めば、前立腺癌に対抗する強力な手段が期待できることが、今回の結果が示唆しています。

キーワード: 前立腺癌、ケルセチン、緑茶抽出物、アルクチゲニン、増殖抑制