ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ウイキョウは乗物酔いを予防し、イソラムネチンが有効成分である

出典: Fitoterapia 2024, 173, 105816

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0367326X2300391X

著者: Li Zhao, Wanlin Zhong, Xiaoran Kong, Qiaozhen Kang, Limin Hao, Jiaqing Zhu, Jike Lu

 

概要: ウイキョウはセリ科の植物で、独特の甘い香りを有し、香辛料やハーブとして用いられます。ウイキョウはまた、薬草として漢方薬に配合されます。今回の研究では、ウイキョウが乗物酔いを予防することが発見され、その有効成分をイソラムネチンと特定しました。イソラムネチンとは、ケルセチンが体内で変化した代謝物の一つです。摂取したケルセチンが吸収された後、体内で存在する形の代表例がイソラムネチンです。

乗物酔いとは、自律神経の乱れです。自律神経とは、文字通り体が自律的に働く神経のことで、従って自分の意思とは関係なく働き、呼吸・血圧・心拍・消化・排尿・排便を担います。頭痛・胃の不快感・吐気・顔面蒼白・冷や汗の乗物酔いの症状は、自律神経が乱れて起きる消化や心拍の不調です。実験はマウス取り付けた台を1時間ほど回転させて、乗物酔いの状態にしました。自律神経の乱れに着目して、乗物酔いの程度を数値化しました。便の中に顆粒物があれば1個につき1点として、消化不良の指標とします。立っている体毛が多ければ1.2点、中程度なら0.6点、全くなければ0点とします。体の震えがあれば1.2点、なければ0点とします。以上の点数の合計を「乗物酔い指数」と定義しましたが、数値が大きいほど自律神経が乱れています。回転する前のマウスの乗物酔い指数は1~3の範囲でしたが、1時間の回転で5~7に上昇しました。回転の30分前に対象物を飲ませ、回転後の乗物酔い指数を比較して、予防効果を評価する実験を行いました。中国で古来から胃痛の治療にウイキョウが用いられていることに着目して、まずはウイキョウ抽出物を試しました。ウイキョウ抽出物100 mg/kg、200 mg/kg、400 mg/kgをそれぞれ投与したマウスの乗物酔い指数は、3.5~4.5、2.5~3.5、1.5~3.5となりました。用量が増えるにつれ指数が下がり、回転前の1~3に近づいており、ウイキョウが乗物酔いを予防することが分かりました。

ウイキョウに含まれる成分の何が効いているのかを知るべく、次に主要成分であるフラボノイドに着目しました。フラボノイドとは、ケルセチンの仲間の総称です。先程の実験で用いたウイキョウ抽出物を精製してフラボノイド含量を高めたところ、ケルセチンを始めとする8種類のフラボノイドの混合物が得られました。ウイキョウ抽出物に含まれるフラボノイドの割合を考慮して、50 mg/kg、100 mg/kg、200 mg/kgをそれぞれ投与しました。乗物酔い指数は2.5~3.5、2.0~4.0、1.0~2.5となり、ウイキョウ抽出物とほぼ同じ結果でした。従って、ウイキョウ中のフラボノイドが効いていことが判明しました。

次に、8種類のどれが効いているかを調べました。データベースでフラボノイドの吸収性を調べたところ、ケルセチンとイソラムネチンが群を抜いており、2つを比較するとわずかにイソラムネチンが優れていました。そこで10 mg/kg、20 mg/kg、40 mg/kgのイソラムネチンを投与すると、乗物酔い指数は2.5~4.0、1.5~2.5、1.5~2.5となり、有効成分をイソラムネチンと結論しました。

前述のように、ケルセチンを摂れば体内でイソラムネチンに変わります。乗物酔いに悩む方は、事前にケルセチンを多く含む玉ねぎやリンゴを食べることをお勧めします。

キーワード: 乗物酔い、自律神経、ウイキョウ、フラボノイド、イソラムネチン、ケルセチン