ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは3通りの方法で、血中尿酸値を低下する

出典: eFood 2024, 5, e139

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/efd2.139

著者: Wenhui Li, Xuerui Chen, Feng Li, Zhang Huiyao, Zunyang Song, Dapeng Li

 

概要: 尿酸とは、食物に含まれるプリン体という成分が肝臓で変化して生じる老廃物です。文字通り、尿酸は尿と一緒に排出される物質です。しかし、肝臓で過剰に尿酸を産出したり、排泄機能(特に腎臓)に異常が生じると、排出しきれない尿酸が血液中に蓄積します。血中尿酸が上昇すると、痛風の発症を始めとする体の不調が生じる他、関節炎・腎臓病・循環器病の原因となることもあります。今回の研究では、ケルセチンが血中の尿酸を低減する仕組みが解明されました。

マウスを3グループに分け、1) 対照として何も投与しない、2) 代表的なプリン体であるアデニン300 mg/kgの投与、3) アデニン300 mg/kgとケルセチン100 mg/kgの同時投与を、1日1回行いました。プリン体を多く含むレバーやビールを摂り過ぎると痛風を招くとよく言われますが、排出が追い着かない位、多くの尿酸が肝臓で作られ、血液中に蓄積するためです。アデニンを毎日300 mg/kg投与するのは、プリン体の摂り過ぎをマウスでシミュレーションしていることになります。投与期間を27日として血中の尿酸濃度を測定したところ、プリン体を摂り過ぎていない1)では 27日間70~80 μmol/Lで一定でした。2) では右肩上がりに上昇して9日目には180 μmol/L、18日目には240 μmol/L、27日目には300 μmol/Lとなりました。3) でも右肩上がりは変わりませんが、9日目150 μmol/L、18日目160 μmol/L、27日目240 μmol/Lとなり、2)に比べると上昇が抑制されるケルセチンの効果を認めました。

ケルセチンはマウスに何をもたらしたのか?最も考えられるのは、肝臓における尿酸の産出抑制です。プリン体を尿酸に変換するキサンチンオキシダーゼという酵素の活性を、27日目の肝臓で比較しました。データは1) 33 U/g、2) 45 U/g、3) 38 U/gであり、過剰なプリン体が活性化した尿酸産出を、ケルセチンが抑制したことが読み取れます。

次に考えられるのは、腎臓における尿酸の排出促進です。尿酸の排出において、尿酸を運搬するABCG2という蛋白質の存在量を、27日目の腎臓で比較しました。1)における量を1.0とした際の相対比率は2) 0.68、3) 0.79で、プリン体が低下した尿酸排出を、ケルセチンが回復したことが明らかになりました。27日目の腎臓を調べた際、URAT1という尿酸の運び手となる蛋白質の違いも、見つかりました。ABCG2が排出時の尿酸輸送を担うのに対して、URAT1は尿から腎臓に尿酸を再吸収する際の運び手です。1)における量を1.0としたURAT1の相対比は2) 1.8、3) 1.0で、プリン体が活性化した腎臓における尿酸の再吸収は、ケルセチンが正常化しました。

以上の結果、ケルセチンには3通りの働きがありました。肝臓での尿酸産出を抑制し、腎臓での尿酸排出を促進し、尿酸再吸収は抑制します。プリン体の多いビールを飲む時には、タマネギやオクラなどケルセチンを多く含むおつまみを食べて、血中尿酸値の上昇を防ぎましょう。

キーワード: 尿酸、プリン体、ケルセチン、肝臓、尿酸産出、腎臓、尿酸排出、尿酸再吸収