ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

糖尿病の治療において、ケルセチンの摂取は不安感を軽減して生活の質を高める

出典: Journal of Clinical Medicine 2024, 13, 3504

https://www.mdpi.com/2077-0383/13/12/3504

著者: Aikaterini E. Mantadaki, Manolis Linardakis, Maria Tsakiri, Stella Baliou, Persefoni Fragkiadaki, Elena Vakonaki, Manolis N. Tzatzarakis, Aristidis Tsatsakis, Emmanouil K. Symvoulakis

 

概要: 糖尿病の合併症にうつ病は含まれていませんが、糖尿病はうつ病になりやすく、うつ病は糖尿病になりやすいことが知られています。また、糖尿病患者の3人に2人が気分の落ち込みを感じていることを示したアンケート調査もありました。従って、糖尿病そのものの治療に加えて、メンタル面の不調も同時に解消する手段の確立が重要な課題です。今回の研究では、糖尿病の治療におけるケルセチンの摂取が患者さんの不安感を低減し、生活の質を向上することが、ヒト試験で示されました。

50~79歳の糖尿病患者88名を、ランダムに2群に分けました。46名を標準治療群として、通常のの糖尿病の治療のみ行いました。42名は通常の治療に加えて、ケルセチン500 mgを毎日摂取しました。12週間の第1次治療期間、続く8週間の中断、12週間の第2次治療期間で構成される、合計32週間の試験です。終了後に2種類の検査を行い、不安感と生活の質をそれぞれ調査しました。

不安感の検査は、アンケート形式で行いました。「何かひどいことが起こる気がしますか?」「今の状態が心配ですか?」のような質問が10個並んでいます。「いつも」「頻繁に」「時々」「滅多にない」で回答しますが、それぞれに4~1の点数がつきます。最大で40点、最小で10点の合計点数となりますが、数値が大きい程、不安感が深刻です。標準治療群の合計スコアは、治療前が21.35±4.08点で、治療後が22.04±5.51点でした。従って、不安感は殆ど変わらないか、若干悪化したと見なせます。一方、ケルセチン群では、21.17±3.16点から15.62±4.16点への大幅な改善が認められました。不安感の軽減は、通常の糖尿病の治療のみでは不可能で、ケルセチンを摂取して初めて実現できました。

似たような質問と回答に紐づいた点数で生活の質も知ることが出来ますが、採用した検査は、広範囲な評価が特徴です。身体機能・身体の日常役割機能・体の痛み・全体的健康感・活力・社会生活機能・精神の日常役割機能・心の健康、の計8項目から総合的に生活の質を評価しました。標準治療群の合計スコアは、治療前が67.13±27.20点で、治療後が81.47±15.97点で、こと生活の質に関しては治療によって悪化しました。だからと言って、糖尿病を治療しない訳にも行かず、大きなジレンマがあります。ところがケルセチン群では、67.19±22.66点が54.22±26.05点に減少しました。不安感の軽減からある程度予想は出来ましたが、ケルセチンは身体面からも精神面からも生活の質を改善しました。

ケルセチンの効果は、糖尿病そのものにも及んでいます。血液で酸素を運ぶ役割を担うヘモグロビンですが、血糖値が高いと糖が結合します。全ヘモグロビンに占める糖化した割合は、糖尿病の指標の一つです。標準治療群におけるヘモグロビンの糖化率は6.76%のままで変化しませんでしたが、ケルセチン群では7.06%から6.78%に減少しました。

糖尿病は悪化すると死に至り、治療すると今度は生活の質が悪化する、実に厄介な病気です。発症しいのが一番ですが、万一かかった時にはケルセチンが強い味方になりそうです。

キーワード: 糖尿病、ヒト試験、ケルセチン、不安感、生活の質