ケルセチン・フラボノイド 論文・文献データベース

ケルセチンは血液凝固を抑制して、血栓を予防する

出典: Journal of Ethnopharmacology 2024, 335, 118686

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0378874124009851

著者: Debananda Gogoi, Pronobesh Chattopadhyay, Swapan K. Dolui, Mujibur R. Khan, Ashis K. Mukherjee

 

概要: 血液中には赤血球や白血球と並んで、血小板という第3の成分があります。軽い出血がすぐ止まるのは、血小板が傷口に集まって、血液を固めて傷口をふさぐためです。この血液が固まる現象は、血液凝固と呼ばれます。傷口をふさぐ血液凝固は生きる上で大切ですが、血管の内部での血液凝固は、血栓と呼ばれる血液の塊を形成します。血栓は血管を詰まらせて血液の流れを妨害するので、心筋梗塞・虚血性心疾患・脳卒中の原因となり危険です。今回の研究では、ケルセチンが血液凝固を抑制して血栓を予防することが発見されました。

マウスを1) 処置なし、2) ケルセチンを低用量(10 μM)投与、3) ケルセチンを中用量(25 μM)投与、4) ケルセチンを高用量(50 μM)投与の4グループに分けました。6時間後に採血を行い、それぞれの血液凝固に要する時間を比較しました。この試験はプロトロンビン時間と呼ばれ、採取した血液サンプルに凝固因子を加えて行います。結果は、1)の14.8秒に対して、2)~4)では18.9, 21.3, 27.8秒とケルセチンの投与量が増えるに従ってプロトロンビン時間は長くなりました。この事実は、ケルセチンが血液凝固までの時間を延長するため、ケルセチンが血液凝固を抑制したことを意味します。次に、活性化部分トロンボプラスチン時間を測定しました。これも血液凝固に要する時間を見ていますが、プロトロンビン時間が外因性の血液凝固を調べたのに対し、今回は内因性、すなわち体の中に存在する物質に起因する血液凝固を調べます。トロンボプラスチンという蛋白質は血液凝固を促す因子ですが、血液中に存在しており、血液サンプルを単に活性化して測定します。ここでもプロトロンビン時間と同様の傾向を示し、ケルセチンは無投与時と比べて血液凝固に要する時間を延長し、用量が増えるとより長くしました。データは、1)~4)それぞれで28.3, 38.2, 40.3, 46.6秒となっています。全体的にプロトロンビン時間よりも長いのは、凝固因子を外から加えないためです。

2種類の試験方法でケルセチンが血液凝固を抑制し、外因性と内因性の両方の要因に有効であると分かったので、次に血栓を予防できるかを検証しました。先程と同様にマウスのグループ分けをした後、ケルセチンを投与しました。先程の実験ではケルセチン投与の6時間後に採血しましたが、今回は1日1回の投与を1週間継続しました。その後、カラギーナンという物質を注射して、血栓を誘発しました。ちなみに、カラギーナンは人工的に血栓を作らせる常套手段ですが、なぜ血栓を作るのか一部は解明されましたが、詳細はまだ不明です。カラギーナンを注射して72時間後の血栓の形成を比較しました。ケルセチンを投与しない1)の血栓を基準としました。2)では1)に比べ8.3%阻害されていました。3)では18.6%、4)では35.4%とケルセチンの投与量に応じて阻害率が向上しました。

以上の結果、ケルセチンは血液凝固を抑制して血栓を予防しました。飛行機に長時間乗った時に突然死するエコノミー症候群は、血栓が原因です。飛行機に乗る前には玉ねぎやリンゴなどでケルセチンを多く摂って、血栓を予防しましょう。

キーワード: ケルセチン、血液凝固、血栓